新しい犬を迎えてから、先住犬が飼い主にべったりくっつくようになった。ごはんを残す。新入り犬が近づくとプイッと離れる。こんな様子を見て、「やきもちをやいているのかな」と心配になる飼い主さんは多いと思います。
「嫉妬」に見える先住犬の行動は、実際には環境の変化によるストレス、居場所への不安、飼い主の注目や物の取り合いといった複数の理由が混ざっていることが少なくありません。この記事では、先住犬に出やすいサインを「行動」「体と表情」「体調」に分けて整理し、ストレスを減らす工夫と受診の目安をまとめます。
犬は「嫉妬」するのか?研究からわかること
犬の嫉妬については、カリフォルニア大学サンディエゴ校のクリスティン・ハリス氏らが2014年に学術誌「PLoS ONE」で発表した研究があります。報道によると、36頭の犬の飼い主が、本物そっくりのぬいぐるみの犬、かぼちゃ型の入れ物、絵本のそれぞれと関わる様子を観察したところ、ぬいぐるみの犬と関わったときに、犬が飼い主を押したり触ったり、間に割り込もうとしたりする行動が目立ったとされています。
研究者は、犬は飼い主が「ライバル」と見なした相手に関心を向けると、飼い主との関係を守ろうとする行動を取る可能性があると考えています。ただし、ハリス氏自身が、犬の主観的な体験まではわからないと慎重に述べています。つまり、人間の嫉妬と同じ気持ちかどうかは断定できませんが、「飼い主の関心を取り戻そうとする行動」が実際に出ることは、飼い主が心得ておいてよい点です。
先住犬に出やすいサイン
飼い主との関わりに出るサイン
- 飼い主の後ろをずっとついて歩く、膝に乗る、体をぴったりつける
- 新入り犬を撫でているときに、間に割り込む、前足でちょんちょんと触る
- 要求吠えが増える
- これまで失敗しなかったトイレの失敗が増える
これらは、飼い主の注目を取り戻したい、または不安を安心に変えたいという行動の可能性があります。オールアバウトの解説では、甘えん坊で飼い主にべったりの犬は、新入りにヤキモチをやいていじけたり、攻撃的になったりすることがあると紹介されています。
新入り犬との関わりに出るサイン
- 新入り犬が近づくと離れる、目を合わせない
- 新入り犬のいる部屋に入りたがらない
- ごはんやおもちゃ、寝床を守って唸る
- 新入り犬を完全に無視する(先住犬が新入り犬を無視する場合は、別の記事で詳しく書いています)
AKC(アメリカン・ケネル・クラブ)の記事では、食べ物やおもちゃなどを守る行動のサインとして、体をこわばらせる、じっと見つめる、白目が見える、唇をめくる、低く唸るといった様子が挙げられています。
生活リズムや体調に出るサイン
- 食欲が落ちる、ごはんを残す
- 眠りが浅い、落ち着きなく歩き回る
- 下痢や吐き気など、お腹の調子が変わる
- 遊びや散歩に乗り気でなくなる
オールアバウトでは、相性が合わない場合に犬が強いストレスで病気になることもあると述べています。また、獣医師の片川優子氏は、現代ビジネスの記事で、先住犬が子犬の相手で休めずにストレスから体調を崩すことがあると注意しています。
見逃しやすい「小さなサイン」
犬は、ストレスを感じても、いきなり唸ったり吠えたりするわけではありません。争いを避けるために、もっと小さなしぐさでメッセージを出すことが多いといわれます。こうしたしぐさは「カーミングシグナル」と呼ばれ、ノルウェーの動物学者トゥーリッド・ルーガス氏が提唱した考え方で、27種類に分類されているとオールアバウトの記事で紹介されています。
| しぐさ | 考えられる意味(目安) |
|---|---|
| あくび(眠くないのに繰り返す) | 緊張を和らげようとしている |
| 鼻や口のまわりをなめる | 不安・不快のサインのことがある |
| 目をそらす、顔をそむける、背を向ける | 「それ以上近づかないで」の合図 |
| 体が固まる、動きが止まる | 我慢している状態。そのまま続けると逃げる・噛むこともある |
| 地面のにおいを嗅ぎはじめる | その場の緊張から気をそらしている可能性 |
Petscareの解説でも、先住犬の限界のサインとして、体の硬直、背中の毛の逆立ち、口をしきりになめる、目をそらすといった様子が紹介されています。
ただし、1つのしぐさだけで判断しないことが大切です。あくびや口なめは、眠いときや食後にも見られます。いつ、誰がそばにいるとき、直前に何があったかとセットで観察してください。また、カーミングシグナルについては、イタリアのピサ大学の研究チームが予備的な研究を発表していますが、結果はまだ予備的で、はっきりした結論には至っていないとされます。「絶対にこうだ」と決めつけず、参考のひとつとして使うのが安心です。口をなめる行動は、犬が口をペロペロする理由も参考になります。
先住犬のストレスを減らす工夫
- 世話の順番を先住犬から:エランコ社のサイトでは、先住犬の通常の流れ(リード、ごはん、遊びなど)を新入り犬より先にして、日課が変わらないようにするとよいと紹介されています。
- 先住犬だけの時間を毎日つくる:エランコ社では、先住犬と1対1で過ごすことが、嫉妬の緩和に役立つとされています。10分でも、新入り犬のいない場所で散歩や遊びをする時間を持ちましょう。
- 逃げ場を作る:ベビーゲートやサークルで、新入り犬が入れない休憩スペースを作ります。
- 新入り犬との接触を短く区切る:疲れたら休憩させ、続けて関わらせない。
- 先住犬を叱りすぎない:オールアバウトでは、先住犬ばかり叱ると、いじけたりヤキモチをやいたりする原因になるとされています。叱るより、できている場面をほめる回数を増やしましょう。
- 運動と気分転換:散歩の時間や、においを嗅ぐ時間を確保します。
迎えて間もない時期の進め方は、新入り犬を迎えた最初の1週間にまとめています。
様子を見てよい場合と、受診を考えたい場合
迎えて数日〜数週間は、多少の変化が出ても自然な適応の範囲であることがあります。ただし、次のような場合は、ストレスだけと決めつけず、動物病院に相談してください。
- 食欲が落ちた状態が続く、水を飲まない
- 下痢や嘔吐が続く、ぐったりしている
- 急に触られるのを嫌がる、足をかばうなど、痛みを疑う様子がある
- 唸りや噛みつきが急に増えた
AKCの記事では、大人になってから急に物を守る行動が始まった場合は、体調の問題が背景にあるかもしれないので、まず獣医師に相談するよう述べています。行動の問題は、その後でトレーナーや行動診療を行う獣医師に相談すると、整理しやすくなります。
よくある質問
Q. 先住犬が急に甘えん坊になりました。「赤ちゃん返り」でしょうか?
環境の変化に不安を感じて、飼い主のそばで安心を得ようとしている可能性があります。要求にすべて応えるのではなく、落ち着いているときに十分に触れ合う時間をつくると、気持ちが安定しやすくなります。
Q. 新入り犬を撫でると先住犬が割り込んできます。やめさせたほうがいい?
割り込みを叱るより、先住犬の時間を先に確保するのがおすすめです。先に先住犬を撫でてから新入り犬に関わるなど、順番を整えてみてください。
Q. 嫉妬のせいで先住犬が新入り犬を攻撃しないか心配です。
唸り、歯をむく、噛もうとするなどの様子が見られたら、2頭を分けて、慣らす手順を最初からやり直してください。取り合いの対処は犬の多頭飼いで喧嘩が起きる原因と対処法も参考になります。
まとめ
- 「嫉妬」に見える行動は、ストレス・居場所の不安・資源の取り合いが混ざっていることが多い
- 研究では、犬が飼い主の関心を取り戻そうとする行動が示されているが、気持ちまでは断定できない
- 行動・体と表情・体調の3つの面から先住犬を観察し、小さなサインも拾う
- 先住犬優先の日課、1対1の時間、逃げ場づくりでストレスを減らす
- 食欲不振や下痢などが続く、急な変化があるときは動物病院へ
この記事は一般的な情報をまとめたもので、個々の犬の診断や治療に代わるものではありません。
この記事の執筆者
ルーク隊長(犬のまとめ 運営者)
子どもの頃から20年以上、犬との暮らしを続けている犬好き。身内にペットトリマー・ドッグトレーナーがおり、日常的に多くの犬と接する環境にある。

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