新しい犬を迎えたのに、先住犬が新入り犬を完全に無視している。近づこうともしないし、遊ぶ気配もない。「このまま仲良くならないのでは」と心配になりますよね。
先に結論をお伝えすると、「何日で仲良くなる」という決まった期間はありません。数日で打ち解ける組み合わせもあれば、数週間から数か月かけて距離が縮まる組み合わせもあります。そして「無視」は、ケンカよりずっと穏やかな、様子見の状態であることが少なくありません。この記事では、無視の裏にある犬の気持ちの考え方、見極めのポイント、飼い主ができる関わり方を整理します。
先住犬の「無視」は拒絶とは限らない
先住犬にとって、新入り犬は突然家に入ってきた見知らぬ相手です。人間でいえば、いきなり知らない人が同居を始めたような状況ですから、距離を置いて様子を見るのは自然な反応です。
アメリカの動物行動学者で、パデュー大学の動物福祉科学センター所長であるキャンディス・クローニー氏は、AP通信の記事(NBCニュースに掲載)の中で、2頭目を迎えるときは対面を数週間かけてゆっくり進めることを勧めています。最初から仲良くなる前提で考えず、時間をかけて関係ができていくものと考えたほうが、飼い主の気持ちも楽になります。
また、犬の中には、もともと他の犬と距離を置きたい性格の子もいます。ペット情報サイトPetscareの解説でも、相性が合いそうにないときは無理に接触の機会を増やさず、十分な見守りと、どちらの犬も安心できる空間の確保を優先するよう述べられています。「遊び友だちにならなくても、同じ家で穏やかに暮らせれば十分」というゴール設定も、現実的な選択肢のひとつです。
「穏やかな無視」と「我慢している無視」の見分け方
同じ「無視」でも、中身は大きく2つに分かれます。ここを見分けることが、いちばん大切です。
| 見た目 | 穏やかな無視(様子見) | 我慢している無視(要注意) |
|---|---|---|
| 体つき | やわらかく、リラックスしている | 固まっている、動きが止まる |
| 目 | ふつうに周りを見ている | 目をそらし続ける、白目が見える |
| 口元 | 半開きなど自然な状態 | 口をしきりになめる、唇をぎゅっと閉じる |
| 新入り犬が近づくと | その場でそのまま過ごす、ゆっくり離れる | 背中の毛が逆立つ、低く唸る、急に立ち去る |
Petscareの解説では、良いサインとして「体がやわらかい」「しっぽをゆるやかに振る」「遊びを誘うような弾む動き」、注意が必要なサインとして「体が固くなる」「毛が逆立つ」「じっと強く見つめる」「低く唸る」「しっぽを巻き込む」が挙げられています。別のPetscareの記事では、先住犬の限界のサインとして、体の硬直、背中の毛の逆立ち、口をしきりになめる、目をそらすといった行動が紹介されています。
左側のような穏やかな無視であれば、基本的には見守りで大丈夫です。右側のような様子が見られるときは、「無視」というより「我慢」や「警戒」に近い状態かもしれません。その場合は後で説明するように、距離や時間を調整してあげましょう。
無視されている間にやること・やらないこと
先住犬の「逃げ場」と「自分の時間」を確保する
先住犬が落ち着いて休める場所を、新入り犬が入ってこられない形で用意します。ベビーゲートやサークルで仕切り、顔は見えるけれど自由には近づけない状態にしておくと、先住犬は安心しやすくなります。寝床や食事の場所、おもちゃも、犬ごとに分けておくのが基本です。
先住犬の日課は変えない
エランコ社の飼い主向けサイトでは、新入りを迎えたあとも、リードをつける、ごはんをあげる、遊ぶといった世話の順番は先住犬を先にして、日課が変わらないようにするとよいと紹介されています。オールアバウトの解説でも、食事や声かけ、お世話を先住犬から行うことがすすめられています。新入りの世話に手がかかっても、先住犬の散歩や触れ合いの時間を削らないことが大切です。
並んで歩くところから始める
いきなり顔を合わせて遊ばせるより、それぞれ別の人がリードを持って、並行して歩くところから始める方法があります。Petscareでは、最初は安全な距離を保って平行して歩き、様子を見ながら少しずつ距離を縮める進め方が紹介されています。エランコ社のサイトでも、別の人が子犬を連れて、横並びで5〜10分ほど歩く方法が挙げられています。散歩は犬同士が顔を突き合わせずに同じ方向を向いて過ごせるので、緊張しにくい場面です。
2頭が落ち着いているときに、ほめる
2頭が穏やかに同じ空間にいるときに、おやつや優しい声かけで「一緒にいるといいことがある」と覚えてもらいます。おやつの取り合いにならないよう、犬ごとに離れた位置で与えるのがコツです。興奮しているときではなく、静かに過ごせているときに与えてください。
やってはいけない関わり方
- 無理に近づけて「挨拶」させる:先住犬が嫌がっているのに鼻先を近づけると、唸りやケンカの引き金になります。
- 先住犬を叱る:無視したことや、唸ったことを叱っても、関係はよくなりません。叱られると、「新入りがいると嫌なことが起こる」と結びつけてしまうおそれがあります。
- リードをピンと張ったまま近づける:リードが張っていると体が緊張し、犬同士の挨拶がぎこちなくなります。Petscareでもリードは緩めに持つようすすめられています。
- 目を離して2頭だけにする:関係ができるまでは、一緒にいる時間は必ず人が見ていられるときだけにします。
- 新入りばかり構う:新入りに手がかかっても、先住犬の世話をおろそかにしないことが大切です。オールアバウトの解説では、先住犬ばかり叱ると、いじけたりヤキモチをやいたりする原因になると説明されています。
唸りが出た場合の考え方は、犬が唸る理由と正しいやめさせ方もあわせて参考にしてください。唸りは「やめて」を伝える大切なサインなので、むやみに止めさせないことがポイントです。
仲良くなったかどうかの見方と、時間の目安
前述のとおり、日数で測れるものではないので、「前より緊張が減ったか」で見ていくのが現実的です。次は、あくまで見方の一例です。
- 最初の数日〜1週間:お互いの存在に気づき、距離を取って過ごす。ごはんや寝床は完全に別。
- その後の数週間:同じ部屋にいても、体がこわばらなくなる。新入り犬が近づいても、先住犬がその場で過ごせる。
- さらに時間がたつと:においを嗅ぎ合う、近くで寝る、遊びに誘うなどの行動が見られることがある。ただし個体差が大きく、遊ばないまま穏やかに共存するケースも珍しくありません。
数週間で落ち着く組み合わせもあれば、もっと時間がかかる組み合わせもあります。焦って進めるより、止まっているように見える期間も「必要な時間」と考えて見守りましょう。
動物病院やトレーナーに相談したほうがよい目安
次のような様子があるときは、飼い主だけで抱え込まず、早めに専門家に相談してください。
- 唸りや歯をむく行動が激しく、噛みつきやケンカになりそうになる
- 先住犬の食欲が落ちた状態が続く、下痢が続く、元気がない
- 先住犬が部屋の隅から出てこない、排泄を我慢するなど、日常生活に支障が出ている
- 新入り犬が先住犬を執拗に追いかけ、先住犬が逃げ場を失っている
先住犬の急な変化は、環境のストレスだけでなく、体調不良が隠れている場合もあります。まずはかかりつけの動物病院で相談し、そのうえで行動の相談ができる獣医師や、ごほうび中心の方法を取るドッグトレーナーを探すと安心です。ケンカが起きてしまった場合は、犬の多頭飼いで喧嘩が起きる原因と対処法も参考にしてください。
よくある質問
Q. 1か月たっても先住犬が新入り犬を無視します。失敗でしょうか?
失敗とは言い切れません。互いに攻撃的な行動がなく、それぞれが落ち着いて暮らせているなら、「ほどよい距離感の同居」ができているともいえます。無理に遊ばせようとせず、先住犬が安心できる環境を保ちながら、散歩などの穏やかな場面で少しずつ一緒に過ごす時間を増やしてみてください。
Q. 新入り犬が先住犬にしつこく近づき、先住犬が逃げてばかりいます。
先住犬が逃げられる場所(新入り犬が入れないスペース)を用意し、新入り犬には別の遊びや休憩に誘導してあげてください。新入り犬が子犬の場合は、先住犬のサインを読み取れず、しつこくなりがちです。先住犬が疲れていそうなら、子犬のほうを別の場所で休ませましょう。
Q. 先住犬が私にだけ前より甘えてきます。これは嫉妬ですか?
環境の変化で不安を感じ、飼い主のそばで安心を得ようとしている可能性があります。一緒にいる時間や、撫でる、声をかける、散歩に行くなどの先住犬だけの時間を、短くても毎日確保してあげてください。「嫉妬」と呼ばれる行動の多くは、ストレスや居場所への不安として説明されます。
まとめ
- 先住犬の無視は、拒絶ではなく様子見であることも多い
- 「穏やかな無視」か「我慢している無視」かを、体のこわばりや口元のサインで見極める
- 先住犬の逃げ場と日課を守り、並んで歩くなど緊張しにくい場面から始める
- 叱る、無理に近づける、目を離すのは避ける
- 仲良くなる期間に決まりはなく、遊ばなくても穏やかに共存できれば十分
- 唸りが激しい、食欲が落ちるなどの様子があれば、動物病院や専門家に相談を
多頭飼い全体のメリットやデメリットを整理したいときは、犬の多頭飼いを考えていますか?多頭飼いの魅力とメリット・デメリットも読んでみてください。なお、この記事は一般的な情報をまとめたもので、個々の犬の診断や治療に代わるものではありません。
この記事の執筆者
ルーク隊長(犬のまとめ 運営者)
子どもの頃から20年以上、犬との暮らしを続けている犬好き。身内にペットトリマー・ドッグトレーナーがおり、日常的に多くの犬と接する環境にある。

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