愛犬が急に唸ったり、歯をむいて威嚇してきたら、誰でも驚いてしまいます。「強く出ないと舐められる」「力で言うことを聞かせないと」と思ってしまいがちですが、それは逆効果になることがあります。
- 犬の唸りは「やめてほしい」という警告サインで、噛む前の合図です。
- 愛犬が威嚇してきたら、マズルを掴む・叩く・強く見つめ返すのはNG対応です。
- 犬に唸られたら、まず距離を取り、おもちゃや食べ物など唸りの原因を取り除きます。
- 愛犬が穏やかに過ごせているときに、たくさん褒めて落ち着く経験を重ねます。
- 愛犬が強く噛む、頻度が増える、急に攻撃的になったときは、専門家に相談します。



忙しいときは、目次と「まとめ」だけ読んでもだいじょうぶだよ。
- 唸りは「やめてほしい」という犬からの警告サインです
- マズルを掴む・叩く・見つめ返すはNG対応です
- まず距離を取り、唸りの原因を取り除くのが基本です


💡 なぜ犬は飼い主を威嚇・挑発するのか
要点|資源の防衛や痛み、恐怖などが背景にあり、唸りは噛む前の警告です。無視や抑え込みは警告なしの咬みつきにつながることもあります。
犬が唸ったり歯をむいたりするのは、多くの場合「これ以上やめてほしい」という犬なりのサインです。よくある原因には次のようなものがあります。
- お気に入りのおもちゃや食べ物を取られそうになっている(資源の防衛)
- 休んでいるところに無理やり触れられた
- 痛みや体調不良があり、触られたくない部位がある
- 過去に叱られた経験から、人の手を怖がっている
- 運動不足やストレスが溜まっている
唸ることは「いきなり噛みつく」よりずっと前の、犬からの警告サインです。ここで無視したり力で抑え込んだりすると、犬は「唸っても無駄だ」と学習し、警告なしにいきなり噛むようになってしまうこともあります。
⚠️ やってはいけないNG対応
要点|マズルを掴む、叩く、強く見つめ返す対応は、攻撃性を悪化させたり緊張を高めたりする可能性があります。
愛犬が威嚇してきたときに、絶対にしてはいけない対応があります。
- マズル(鼻先から口先)やアゴを掴む:口を封じることはできても、恐怖心から防衛本能が強まり、かえって攻撃性が悪化することがあります
- 叩く、仰向けに押さえつける:体罰は一時的に行動を止められても、信頼関係を壊し、根本的な解決にはなりません
- 目を逸らすまで強く見つめ返す:犬にとって正面からの凝視は威嚇と受け取られやすく、緊張をさらに高めてしまう可能性があります
いずれも「力で上下関係を示す」という考え方に基づいた古いしつけ方法で、現在は動物行動学の観点から推奨されていません。
🔧 正しい対処法
要点|いったん距離を取り、原因を取り除き、落ち着いているときに褒めるのが基本。資源の管理にも少しずつ慣らします。
威嚇されたときは、まず慌てず次のように対応しましょう。
- その場でいったん距離を取る:無理に近づいたり手を伸ばしたりせず、犬が落ち着くのを待つ
- 唸りの原因を取り除く:おもちゃや食べ物が原因なら、無理に取り上げようとしない
- 落ち着いたら褒める:威嚇せずに穏やかに過ごせているときに、たくさん褒めてあげる(ポジティブな強化)
- 普段から資源の管理に慣れさせる:食事中に近づいても良いことが起きる、と少しずつ学習させる
特に子犬期や、まだ人との関係を築いている最中の犬には、甘噛みのしつけの段階から、力ではなく信頼関係でコミュニケーションを取る習慣をつけておくことが、将来の威嚇・咬みつき予防にもつながります。
🏥 動物病院・専門家に相談すべきサイン
要点|強く噛む、頻度が増えた、急に攻撃的になったときは、自己流にせず動物病院や専門家に相談しましょう。


以下のような場合は、自己流で対処しようとせず、動物病院や動物行動学の専門家に相談してください。
- 血が出るほど、あるいは何針も縫うほど強く噛むことがある
- 威嚇や咬みつきの頻度が増えている、悪化している
- 急に性格が変わったように攻撃的になった(痛みや病気が隠れている可能性)
すでに人を噛んでしまったことがある場合は、噛み癖の原因と効果的なしつけ方法もあわせて参考にしてください。急な性格の変化は、犬の噛みつきから守る対処法と予防策で詳しく解説しています。
よくある質問


- 子犬が甘噛みの延長で唸ることがあります。これも威嚇でしょうか?
-
子犬期の唸りは、遊びの延長で興奮している場合と、本当に嫌がっている場合の両方が考えられます。しっぽを振って楽しそうにしているか、体を硬くして固まっているかなど、表情や体全体の様子をあわせて観察しましょう。判断に迷う場合はドッグトレーナーに相談するのがおすすめです。
- 唸られたときに逃げると、犬に「勝った」と学習させてしまいませんか?
-
そのような上下関係の発想自体が、現在の動物行動学ではあまり支持されていません。距離を取ることは「服従」ではなく、犬を落ち着かせて安全を確保するための適切な行動です。無理に立ち向かう必要はありません。
- 家族の中で、特定の人にだけ威嚇するのはなぜですか?
-
その人が過去に痛い思いをさせた、力で押さえつけたことがあるなど、個別の経験が影響している場合があります。また単に接する時間が短く、信頼関係が十分に築けていないことも考えられます。焦らず、おやつを使ったポジティブな関わりを重ねていきましょう。
- 犬が飼い主を咬んだら、どうすればいいですか?
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傷口を水道水でよく洗い、早めに医療機関を受診します。犬の口にはパスツレラ属菌などがいて、腫れや発熱が出ることがあります。
- 威嚇する犬のしつけは、誰に相談すればいいですか?
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まずかかりつけの獣医師で、痛みや病気がないか診てもらいます。そのうえで、行動診療を行う獣医師や、威圧しない方法で指導するトレーナーに相談します。
- 興奮して唸っている犬を、手で止めに入っても大丈夫ですか?
-
避けてください。興奮した犬が、止めに入った人を代わりに咬む「転嫁攻撃」が起こることがあります。まず落ち着くまで距離を取ります。
- 高齢になってから急に唸るようになりました。年のせいですか?
-
年齢だけとは限りません。痛みや認知機能の低下などが関係することがあります。急な変化は、しつけで直そうとせず、動物病院に相談します。
専門家に確認しました
身内のドッグトレーナーに確認したところ、「唸っている犬に無理に近づく相談者が多いが、まず距離を取ることが最優先」とのことでした。唸りを止めさせることより、唸らせている原因そのものを取り除くことに意識を向けてほしいとアドバイスをもらいました。
犬が威嚇するとき、噛む前にどんなサインが出ますか?
噛む前には、体のこわばりや唸りなど、段階的な警告が出ることがほとんどです。ASPCA(米国動物虐待防止協会)は、犬が噛む前には何らかの警告がほぼ必ずあるとしています。
攻撃的な行動は、警告から段階的に強まります。途中で止まることもあります。ASPCAが挙げる流れの例は、次のとおりです。
- 体が硬くこわばる
- 唸る
- 歯をむく
- 近づいてくる(接触はしない)
- 噛みつく
唸る前の段階でも、ストレスのサインは出ています。AVSAB(米国獣医動物行動学会)の声明では、嫌な思いをした犬に次のような行動が見られるとされています。
- 体が緊張する
- 姿勢を低くする
- 唇をなめる
- しっぽを下げる
- 前足を上げる
- パンティング(口を開けて荒く呼吸する)
- あくび
威嚇の背景は、ひとつではありません。ASPCAは、攻撃行動をきっかけ別に整理しています。きっかけが分かると、避け方も決まります。
| タイプ | きっかけの例 | 家庭での注意 |
|---|---|---|
| 所有物(資源)の防衛 | フード、おもちゃ、寝床を守ろうとする | 食事中は近づかず、取り上げようとしない |
| 恐怖 | 逃げられないと感じたとき | 追い詰めず、逃げ道を残す |
| 痛み | 痛みがあると、ふだん穏やかな犬でも咬むことがある | 触られて嫌がる場所を記録し、動物病院へ |
| フラストレーション | 興奮しているのに近づけない(リードやケージの中など) | 興奮が高い場面では、手を出さない |
| 転嫁(リダイレクト) | 興奮した相手の代わりに、止めに入った人や動物を咬む | 興奮している犬に、手や体で割り込まない |
どのタイプか判断がつかないときは、自己判断でしつけを続けず、動物病院に相談してください。
急に威嚇するようになったとき、病気や痛みは関係しますか?
関係することがあります。ASPCAは、痛みを伴う整形外科の病気、感染症、甲状腺や副腎の異常、認知機能の低下などが、怒りっぽさや攻撃につながることがあるとしています。行動の対応より先に、獣医師が医学的な原因を調べることが勧められています。
犬の行動の相談では、獣医師はまず健康上の問題を除きます。そのうえで、行動の前に何があり、どんな行動で、直後にどうなったかを聞き取ります。MSDマニュアル(獣医学の専門書)が、この流れを説明しています。
受診の前に、次の内容をメモしておくと、診察が進みやすくなります。
- 威嚇が始まった年齢と、続いている期間
- 具体的な行動の内容
- 頻度と、1回あたりの長さ
- 時間がたって変わったかどうか
- きっかけになりそうな場面
- これまでに試した対処と、その結果
- 動画の記録(安全な場面で撮影します)
病気が見つからず、威嚇が続くときは、行動診療に詳しい獣医師に相談します。東京大学の動物医療センターの行動診療科は、犬と猫の問題行動を扱い、攻撃行動も対象です。行動療法、薬物療法、外科療法を組み合わせ、治療には数か月から年単位かかることが多いとされています。初診は、かかりつけの動物病院を通して予約します。
トレーナーに頼むときは、痛み・恐怖・威圧を使わない方法かどうかを確かめます。AVSABは、チョークチェーン、プロングカラー、電気ショック首輪や、「アルファロール」のような力で押さえつける方法を使わないよう求めています。ASPCAは、資格があっても攻撃行動への対応経験は別なので、必ず確認するよう勧めています。
犬に咬まれてしまったとき、飼い主はまず何をしますか?
傷口を水道水でよく洗い、できるだけ早く医療機関を受診します。犬の口の中には、人に感染症を起こすことがあるパスツレラ属菌がいます。犬自身は症状が出ないことが多いため、見た目では分かりません。
- 咬まれた直後は、傷口を水道水でよく洗い、消毒します(埼玉県の案内)。
- 咬まれた場所の腫れ、痛み、発熱は感染のサインです。異常があればすぐ医療機関を受診します(静岡県の案内)。
- 高齢者や基礎疾患のある人は、症状が重くなりやすいため、軽い傷でも早めに受診します(静岡県の案内)。
- 犬が人を咬んでしまった場合は、被害者の治療を受けてもらったうえで、保健所への届出と、獣医師による狂犬病の鑑定が必要です。手続きの細かい内容は自治体で違うため、保健所に確認します(埼玉県の案内)。
犬による咬傷事故は、身近な出来事です。環境省の統計では、令和6年度の咬傷事故の総件数は、全国で5,592件でした。自治体が把握した件数のため、実際はもっと多い可能性があります。
威嚇や咬みつきが続く家庭では、安全管理も同時に進めます。ASPCAは、次の対応を勧めています。
- 攻撃の引き金を見つけて避ける(食事中は近づかない、来客時は別の部屋で過ごさせるなど)
- 子どもや高齢者がいる家庭では、犬との接触をとくに厳しく管理する
- 落ち着いたように見えても、完全に治ったと考えず、管理を続ける
- 行動の改善は、報酬を使う方法で、専門家の指導のもとに進める
咬傷が深い、出血が止まらない、顔や手などの傷が大きい、咬まれた人に持病があるなど、不安があるときは、救急を含めて医療機関に相談してください。
この追記の出典
- ASPCA|Aggression(犬の攻撃行動)
- AVSAB|Position Statement on Humane Dog Training(人道的なドッグトレーニングに関する声明)
- MSDマニュアル(Merck Veterinary Manual)|Diagnosing Behavior Problems in Dogs
- 東京大学 動物医療センター|行動診療科
- 静岡県動物管理指導センター|パスツレラ症に御注意下さい
- 埼玉県|犬が人を咬んだとき
- 環境省|動物による事故(犬による咬傷事故状況・全国、昭和49年度〜令和6年度)
まとめ|力ではなく「なぜ」を理解することが第一歩


犬の威嚇や挑発的な行動は、力で抑え込むものではなく、その裏にある原因を理解して取り除いていくものです。マズルを掴む・叩くといった対応はかえって状況を悪化させる可能性があるため、まずは距離を取り、落ち着いて原因を見極めることから始めてください。改善しない場合や咬傷がある場合は、早めに専門家に相談しましょう。
この記事の執筆者
ルーク隊長(犬のまとめ 運営者)
子どもの頃から20年以上、犬との暮らしを続けている犬好き。身内にペットトリマー・ドッグトレーナーがおり、日常的に多くの犬と接する環境にある。
📚 参考にした情報
- American Kennel Club (AKC)|Why Dogs Growl and How to Handle It
唸りは距離を求める警告で、叱ると警告をやめてストレスが残り危険が見えにくくなること、まず距離をとり原因を把握し、必要ならトレーナーや行動専門家に相談するという記事の主張の裏づけ。 - ASPCA|Aggression (Common Dog Behavior Issues)
攻撃性には段階的な警告サインがあること、痛みや病気が原因になり得るため先に獣医師に診てもらうこと、アルファロールなど威圧的な方法は悪化や咬傷のリスクを高めるという説明の裏づけ。 - American Veterinary Society of Animal Behavior (AVSAB)|Position Statements (Humane Dog Training)
犬のしつけは報酬ベースの方法のみを推奨し、体罰など嫌悪的な方法は用いるべきでないという専門学会の立場の裏づけ。
※上記の公的・専門機関の情報をもとに、当サイトの言葉でまとめています。内容は獣医師の診察・診断の代わりにはなりません。



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