犬の無駄吠えは、「なぜ吠えているのか」を見分けて、その理由に合った対応をすれば、時間をかけて減らしていけます。吠えを叱って止めようとするより、要求には応えず静かな瞬間にほめる、警戒や恐怖には慣らす練習をする、というのが基本の考え方です。



ひとつずつ、やさしく整理していくね。


ただし、急に吠え方が変わった、高齢になって夜に吠えるようになった、攻撃的な様子があるといった場合は、しつけではなく体調の問題が隠れていることがあります。また、すでに近所から苦情が出ているときは、自己流で粘らず専門家に早めに相談してください。
・犬が吠える主な理由(要求・警戒・恐怖・不安・興奮)の見分け方
・吠えのタイプ別に、今日からできる対応
・やってはいけない対応と、相談する目安
🎓 犬はなぜ吠える?5つの理由と見分け方
吠えは、犬にとって自然なコミュニケーション手段です。「吠えること自体」をなくすのではなく、「困る場面での吠え」を減らす、という考え方で進めましょう。まずは、何のために吠えているのかを見分けます。
| 吠えのタイプ | よくある場面と見分けのヒント |
|---|---|
| 要求吠え | ごはん、散歩、遊び、おやつなどの前に、飼い主を見ながら吠える。応えると繰り返す |
| 警戒吠え | チャイム、来客、窓の外の人や犬に対して、家や家族を守るように吠える |
| 恐怖・不安の吠え | 大きな音や知らない人・犬の前で、後ずさりしながら吠える。留守番中の吠えもここに含まれることがある |
| 興奮の吠え | 遊びの前、散歩の準備、帰宅時など、うれしくて吠える。しっぽが大きく動く |
| 退屈・運動不足の吠え | やることがない、散歩や遊びが足りないときに、単調に吠え続ける |
同じ犬でも、場面ごとに理由は変わります。「いつ・どこで・何をきっかけに・どんな体の動きで吠えたか」を数日メモしておくと、タイプが見えてきます。


🎓 要求吠えを減らす方法|吠えている間は応えず、静かになったら応える
散歩やごはんの前、遊んでほしいときに吠えるのは、「吠えると要求が通った」という経験を重ねて覚える行動です。力で上下関係を示す必要はなく、吠えている間は要求に応じず、静かになってから応じるという一貫した対応が基本になります。
- 吠え始めたら、目を合わせず、声もかけず、静かに待つ
- 犬が吠えるのをやめた数秒後に、声をかけて要求に応える(ごはん・散歩・遊びなど)
- 静かにいられる時間を、少しずつ長くしていく
- 家族全員が同じルールで対応する(1人でも応えてしまうと、犬は「吠えれば通る」と学習します)
最初の数日は、吠える回数がかえって増えることがあります。これまで通っていた要求が通らなくなり、犬が「もっと強く言わなければ」と試すためで、よくある流れです。
ここで根負けして応えてしまうと、さらに吠えが強くなりやすいので、続けられる範囲のルールにしておきましょう。
「無視」は犬を放置することではありません。吠えている間は要求に応じない、というだけで、静かなときにはたくさん声をかけてほめてください。


🎓 警戒吠え(チャイム・来客・窓の外)への対処法
来客やチャイムに吠えるのは、家を守ろうとする本能に近い行動です。叱ると、犬は「来客のたびに嫌なことが起きる」と学習して、かえって警戒が強まることもあります。「音や人は怖くない、むしろいいことの合図」と学ばせていきます。
チャイムに慣らす練習
- チャイムの音を録音し、犬が反応しない小さな音量から流す
- 吠えずにいられたら、すぐにおやつをあげる
- 音量を少しずつ上げ、慣れたら実際のチャイムで同じように練習する
窓の外・散歩中の吠えを減らす工夫
- 窓際を見えにくくする(カーテンやフィルムなど)
- 吠えるきっかけが出る前に、名前を呼んでおやつで注意をこちらに向ける
- 吠えそうな相手とは、無理に近づかず距離を取る
来客のたびに吠えるなら、玄関に着く前にハウスやクレートに誘導して落ち着かせる方法もあります。ハウスの教え方は犬のクレートトレーニング完全ガイドで順を追って紹介しています。


🎓 怖くて吠える・留守番で吠える|恐怖と不安への接し方
大きな音や慣れない環境、知らない犬や人の前で吠えるのは、怖さを遠ざけたい気持ちの表れです。この場合は、吠えを止めようとするより安心できる状況をつくることが優先です。
- 怖がったら、安心できる場所に静かに移動させる
- 怖いものとの距離を取り、犬が落ち着いていられる範囲から慣らす
- 無理に近づけたり、「大丈夫」と何度も声をかけて興奮させたりしない
- 落ち着いて見ていられたら、おやつと穏やかな声でほめる
飼い主がいなくなると吠え続ける場合は、分離不安が関係していることがあります。留守番の練習の進め方は犬の分離不安症完全ガイドや犬と心通わせる、お留守番の極意も参考にしてください。


🎓 うれしくて吠える・退屈で吠えるときの対処法
帰宅時や散歩の準備中に、うれしくて吠えてしまう犬も多くいます。これは興奮が高まりすぎている状態です。飼い主が大げさに喜んで声をかけると、さらに興奮が上がり、吠えも激しくなることがあります。
- 帰宅直後は声をかけず、目も合わせず、犬が落ち着いてから穏やかに声をかける
- 散歩の準備(リードを手に取る、靴を履く)で吠えるなら、犬が静かになるまで準備を中断する
- 「おすわり」や「ふせ」など、できる行動を求めてから、散歩やおやつを与える
退屈が理由の単調な吠えには、運動と頭を使う遊びを増やすのが近道です。おやつを隠して探させる、フードを詰められるおもちゃを使う、散歩でにおいを嗅ぐ時間を長くとる、といった工夫で、吠える時間が減ることがあります。
ただし、急に増えた吠えの背景に痛みや不調が隠れていることもあるため、様子が普段と違うときは、動物病院で相談してください。
やってはいけない対応|叱る・大きな音・罰で止めようとしない
吠えるたびに大声で叱る、犬の体を叩く、空き缶などの大きな音で驚かせる、といった方法は、一時的に静かになっても、犬の恐怖や不安を強めるおそれがあります。自治体の資料でも、こうした方法が紹介されることがありますが、現在のドッグトレーニングでは推奨されない傾向にあります。
米国獣医行動学会(AVSAB)の「人道的なドッグトレーニング」に関する声明では、ご褒美を使う方法が犬の福祉やトレーニングの効果、人との関係の面で有利だとされており、痛みや不快感に頼る方法は使うべきでないと述べられています。電気ショックや大きな音で止める首輪・器具についても、使う前にまず専門家に相談してください。
- 吠えたときだけ構う(叱るのも「構う」ことになり、吠えを強めることがあります)
- 大声で怒鳴る、叩く、マズルを強く握る
- 空き缶やブザー、スプレーなど、嫌な刺激で驚かせる
- 家族の中で対応がバラバラになる
子犬期のしつけ全般の順番は子犬のしつけ完全ガイドでまとめています。
🏃 吠えを減らす暮らしの土台|運動・遊び・落ち着ける場所
しつけの練習と同じくらい大切なのが、吠えにくい暮らしの土台づくりです。退屈や運動不足は、あらゆるタイプの吠えを増やす背景になります。
- 毎日の散歩に加えて、においを嗅ぐ時間や知育おもちゃで、頭と体を使わせる
- 落ち着ける自分の場所(ハウス・ベッド)を用意する
- 留守番の前に、軽い運動をして満足させておく
- 吠える前の小さなサイン(耳が立つ、じっと見る、そわそわする)に気づいたら、早めに気をそらす
- 静かにしているときこそ、声をかけてほめる
身内のドッグトレーナーも、吠えを強めている原因として「吠えたときだけ構ってしまうこと」をよく挙げているようです(本文末の専門家コメント参照)。
近隣トラブルになりそう・改善しないときの相談先
マンションや住宅密集地では、鳴き声が近隣とのトラブルに発展することがあります。自治体の資料でも、鳴き声は飼い主の管理責任として扱われ、近隣に迷惑をかけないよう呼びかけられています。
自己流のトレーニングを数週間続けても改善が見られない場合や、すでに苦情を受けている場合は、様子を見すぎずに早めにドッグトレーナーへ相談しましょう。
- 苦情を受けたら、まず謝意を伝え、改善に取り組むことを具体的に伝える
- 吠えやすい時間帯と対策を記録しておく
- お住まいの自治体の保健所などで、しつけ教室や相談窓口があるか確認する
- 行動学に詳しい獣医師やドッグトレーナーに、一度見てもらう
動物病院で確認したほうがよいサイン
- 急に吠え方や回数が変わった
- 高齢になって、夜に意味もなく吠えるようになった(老犬介護完全ガイドも参考になります)
- 触られると痛そうに吠える、攻撃的な様子が出た
- 食欲や排泄など、吠え以外の変化もある
このような様子があれば、しつけで抱え込まず、動物病院で確認してもらうのが安心です。
よくある質問
- 吠えている犬を無視するのは可哀想ではないですか?
-
「無視する」というより「吠えている間は要求に応じない」だけで、犬を放置するわけではありません。静かになった瞬間にたっぷり声をかけて応えることで、犬は「吠えなくても伝わる」と学習できます。
- チャイムに吠えるのをやめさせたいです。コツはありますか?
-
チャイム音に慣れる練習が有効です。録音した音を小さい音量から流し、吠えずにいられたらおやつをあげる、というステップを少しずつ繰り返します。来客時はハウスに誘導する方法もあります。
- しつけを始めてから、どのくらいで効果が出ますか?
-
犬の性格や吠えの原因、これまでの学習の積み重ねによって個体差が大きく、一概には言えません。数日で変化が見える子もいれば、数か月かかる子もいます。家族全員で同じ対応を続けることが何より大切です。
- 成犬や老犬でも無駄吠えは直せますか?
-
年齢に関わらず、理由に合った対応を続けることで変化していく犬は多いです。ただし、高齢になってから急に吠えが増えた場合は、体調や認知機能の変化が背景にあることもあります。まず動物病院で相談してみてください。
まとめ|無駄吠えは「理由を見分けて、続ける」
- 吠えには、要求・警戒・恐怖や不安・興奮・退屈などの理由がある
- 要求吠えは、吠えている間は応えず、静かになってから応える
- 警戒吠えは、音や来客に慣らす練習と、ハウスでの落ち着かせ方が有効
- 恐怖や不安の吠えは、無理に近づけず、安心できる状況をつくる
- 叱る・大きな音・罰で止める方法は、恐怖を強めるおそれがある
- 急な変化、高齢での夜鳴き、近隣からの苦情があれば、早めに専門家へ
焦らず、家族全員で同じ対応を続けていけば、犬との暮らしはきっと穏やかになっていきます。
専門家に確認しました
身内のドッグトレーナーに確認したところ、「無駄吠えの相談で多いのは、吠えたときだけ構ってしまい、結果的に吠えることを強化してしまっているケース」とのことでした。静かにしている時間にこそ積極的に声をかけたり褒めたりすることが、遠回りに見えて一番の近道だとアドバイスをもらいました。
この記事の執筆者
ルーク隊長(犬のまとめ 運営者)
子どもの頃から20年以上、犬との暮らしを続けている犬好き。身内にペットトリマー・ドッグトレーナーがおり、日常的に多くの犬と接する環境にある。


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