

アイリッシュウルフハウンドは、体高79cm以上にもなる、世界でも指折りの大きさで知られる超大型犬です。ごわごわとした荒い被毛と堂々とした体つきとは裏腹に、とても穏やかで優しい性格から「家の中では子羊、狩りではライオン」と表現されることがあります。ただし、体の大きさゆえの飼育環境の確保や、寿命が比較的短めと言われること、心臓や骨の病気の傾向など、迎える前に知っておきたい点もたくさんあります。



まずは結論から!くわしい理由は、このあと順番に説明するよ。
この記事では、「アイリッシュウルフハウンドの性格・大きさ・寿命・飼い方・かかりやすい病気」を、FCI(国際畜犬連盟)の犬種標準や英国ケネルクラブ、動物病院グループの情報などをもとに整理しました。犬種全体の比較には犬種図鑑もご利用ください。
📏 アイリッシュウルフハウンドの基本データ
| 英語表記 | Irish Wolfhound |
|---|---|
| 原産国 | アイルランド |
| サイズ | 超大型犬 |
| FCI・JKCグループ | 10G(視覚獣猟犬/サイトハウンド) |
| 体高 | オス79cm以上、メス71cm以上が最低ライン(FCI・英国ケネルクラブの犬種標準) |
| 体重 | オス54.5kg以上、メス40.5kg以上が最低の目安(標準では体高に応じて増えるとされています) |
| 寿命 | 6〜9年ほどと言われています(資料により幅があります) |
| 被毛 | 荒く硬い被毛。目の上とあごひげはとくに針金状 |
| 毛色 | グレー、ブリンドル、レッド、ブラック、ピュアホワイト、フォーン、ウィートン |
標準では、体高の「最低ライン」が決められており、これより大きい個体が多くいます。英国ケネルクラブの標準では、オスの理想的な平均体高は81〜86cmとされています。
体重も、大きな個体ではこの目安をはるかに超えるため、数字よりも、肋骨に軽く触れられるか、腰のくびれがあるかといった体型で判断しましょう。


🐾 アイリッシュウルフハウンドの性格
FCIの犬種標準では、気質は「優しく親切で忠実な猟犬。人にも他の犬にも友好的」と表現されています。「A Lamb in the Home and Lion in the Chase(家の中では子羊、狩りではライオン)」という言葉でも知られています。
動物病院グループの資料でも、忠実で穏やか、子どもや見知らぬ人、他の犬とも比較的仲良くなれるとされています。一方で、番犬や護衛犬には向かない、のんびりしていて指示への反応がゆっくりめ、という記述もあります。
体が大きいため、おとなしくても、うれしくなって飛びついたり、尻尾で物を倒したりすることがあるので、注意が必要です。
視覚で獲物を追う「サイトハウンド」の血を引いているため、走る小動物や猫を見つけると、急に追いかけることがあります。もちろん個体差が大きく、とても静かな子もいれば、遊び好きな子もいます。


📜 アイリッシュウルフハウンドの歴史とルーツ
アイリッシュウルフハウンドの歴史は非常に古く、FCIの犬種標準によると、紀元1世紀のアイルランドではすでに確立された犬種で、391年にその存在を伝える最初の文書の記録があるとされています。
かつては、オオカミやイノシシ、シカの猟に使われていました。アイルランドの王や首長たちとのつながりが語られ、現在ではアイルランド文化を象徴する存在の一つとされています。
オオカミが減るにつれて数も減り、18世紀末から19世紀にかけて絶滅の危機に直面したと言われています。
1800年代には、愛好家たちが残っていた犬を集め、スコティッシュ・ディアハウンドなどの血を加えて立て直したと伝えられています。
その後、1879年のダブリンのドッグショーで初めてこの犬種のクラスが設けられ、1885年には最初の標準と犬種クラブが生まれました。


🐾 見た目・被毛・毛色の特徴
「サイトハウンドの中で最も大きく、背が高い」と標準で表現される犬種です。ただし、がっしりした力強さと、優雅さを併せ持った体つきで、頭と首を高く持ち上げ、軽やかに歩く姿が理想とされています。
頭は長く、小さなバラ耳(後ろに折りたたまれた形の耳)、暗い色の楕円形の目が特徴です。
被毛は荒く硬く、体・あし・頭を覆います。目の上とあごのまわりは特に針金のような毛質です。毛色は、グレー、ブリンドル、レッド、ブラック、ピュアホワイト、フォーン、ウィートンが認められています。
✂️ 被毛のお手入れ(ブラッシング・シャンプー)
硬い被毛は、動物病院グループの資料で「週1回程度のブラッシングと、時々のシャンプー」が目安として紹介されています。抜け毛は少なめと言われますが、体が大きいため、1回のお手入れにかかる時間や労力は小さくありません。
年に2回ほど、古い毛を抜く「ストリッピング」を行うことで、硬い毛質を保てるとされています。やり方は、トリマーさんに相談すると安心です。
大型犬は、肘など体重がかかる部分に「たこ」ができやすいと言われます。硬い床に長時間横になる場合は、厚めのベッドやマットを用意してあげましょう。
皮膚の赤みや、フケ、においが気になるときは犬が体を掻く・皮膚が赤いときの見方を参考に、早めに動物病院に相談してください。


🏃 運動量・散歩の目安と遊び方
大きな体のわりに、家の中では落ち着いて過ごす子が多いと言われています。一方で、体を動かす時間は毎日必要で、目安として1日1〜1.5時間ほどの散歩や運動が紹介されています。囲われた安全な場所で走れる機会があると理想的です。
成長期の運動には特に注意が必要です。超大型犬は成長が早く、骨や関節に負担がかかりやすいため、子犬の時期は、激しい運動やジャンプ、階段の上り下りをできるだけ避け、少しずつ運動量を増やすことが勧められています。
成犬と同じ運動量にするのは、1歳半〜2歳ごろからとする資料もあります。
暑さには弱いとされ、夏は涼しい時間帯の散歩と、室内の温度管理が大切です。滑りやすいフローリングは関節に負担をかけるため、マットを敷くなどの工夫をしましょう。
🎓 しつけで気をつけたいこと
動物病院グループは「体の大きさと力の強さのため、基本的なしつけ(服従訓練)は必須」としています。ごほうびを使った前向きなトレーニングが向いています。子犬のうちは小さくても、成長が早く、数か月後には大人の力を持つため、早いうちから教えることが大切です。
- リードで歩く練習:引っ張る力が強いため、子犬のうちから落ち着いて歩く練習をします
- 飛びつき:体が大きいので、座れたら褒める、というルールを一貫させます
- 呼び戻し:獲物を見つけて追う本能があるため、柵のない場所では慎重に行います
- 社会化:人・犬・車・さまざまな音や場所に、早いうちから少しずつ慣らします
- ハウス(クレート):移動や通院を楽にするため、慣れさせておくと安心です。犬のクレートトレーニング完全ガイドが参考になります
子犬の時期に何を教えるかは子犬のしつけ完全ガイドが参考になります。
専門家に確認しました
身内のドッグトレーナーに確認したところ、「体が大きい分、子犬期のしつけが将来を大きく左右する」とのことでした。成犬になってからでは制御が難しくなるため、リード歩行やハウストレーニングは子犬のうちからしっかり教えておくことをすすめられました。


🏥 かかりやすい病気と健康管理
アイリッシュウルフハウンドでは、拡張型心筋症をはじめとする心臓の病気、骨のがん(骨肉腫)、胃拡張・胃捻転症候群、先天性の肝臓の血管の異常(門脈体循環シャント)、成長期の関節の問題、肺炎などが話題にあがります。
海外の愛好家団体は、特に骨のがんと心臓病を主な健康課題としています。すべての子がかかるわけではありませんが、「この犬種にはそうした傾向が知られている」と知っておくと、小さな変化に気づきやすくなります。
とくに、胸の深い大型犬は胃拡張・胃捻転症候群に注意が必要と言われています。
食後にお腹が張る、吐こうとしても何も出ない、落ち着きなくうろうろする、よだれが増えるなどの様子が見られたら、急を要する可能性があるため、すぐに動物病院に連絡してください。
日常では、食事の前後の激しい運動を避ける、1回の食事量を減らして回数を分ける、といった生活の工夫が紹介されています。
日常でできるのは、次のような予防とチェックです。
- 全身をなでるたびに、あしや関節まわりに腫れや痛がる様子がないか確認する
- 元気や食欲の低下、咳、息切れ、疲れやすさなどが続かないか見る
- 子犬の時期は、ふらつき、吐き戻し、成長が遅いなどの変化に気づく
- 毎日の歯みがきを習慣にする。始め方は犬の歯磨きはいつから?が参考になります
- 定期的な健康診断を受け、体重を記録する
気になる様子が続くときは、自己判断せず動物病院に相談しましょう。このページは診断や治療の情報を示すものではありません。
🍖 食事・成長期の食事・おやつの考え方
超大型犬は、成長期の食事管理がとくに大切です。動物病院グループや愛好家団体の資料は、子犬期には「大型犬用の成長期向けフード」を使い、急に大きくならないよう栄養バランスと量に気をつけることを勧めています。
成長期に太らせ過ぎると、骨や関節に負担がかかりやすくなります。
成犬になってからも、体重が増えやすい場合は量を調整します。フードの量はパッケージの目安を出発点にして、体型と便の状態を見ながら調整してください。見方は犬のフードの量はどれくらい?で整理しています。
成長段階ごとの違いは子犬・成犬・シニアのフードの違いも確認しておきましょう。
食事は1日2回以上に分け、食べ終わったあとは落ち着いて休ませるのが安心です。皮膚や体の調子が気になるときは、自己判断でフードを変えず、かかりつけの動物病院に相談してください。
📏 寿命とシニア期の暮らし
寿命は、他の犬種に比べて短めと言われています。動物病院グループの資料では6〜8年、犬種別の資料では7〜9年とするものもあります。
また、2007年の研究のまとめでは、平均寿命の推定値は約5〜8.75年と幅があるとされ、調査の方法によって数字が変わると説明されています。
数字に幅があるため、あくまで目安として受け止めてください。そのうえで、短めと言われる犬種だからこそ、元気なうちから定期健診を受け、心臓や骨・関節の変化に早く気づけるようにしておくことが大切です。
シニア期の備えは老犬介護完全ガイドも参考にしてください。大型犬は介護の負担も大きいため、早めに環境を整えておきましょう。
✅ 向いている人・向いていない人/お迎え前のチェックリスト
向いているのは、次のような人です。
- 超大型犬が十分に動き回れる広さの住環境を用意できる
- 毎日、落ち着いた散歩の時間を取れる
- 体の大きな犬を、落ち着いて扱える体力と気持ちの余裕がある
- 寿命が短めであることを理解し、限られた時間を大切に過ごせる
向いていない可能性があるのは、狭い住環境で暮らす人、大きな犬の移動や通院が難しい環境の人、車がなく通院が難しい人などです。
お迎え前には、次の点を確認しておくと安心です。
- 体の大きさに合う広さの住まいと、滑りにくい床、段差の少ない環境があるか
- 車での移動手段など、通院や外出の方法を確保できるか
- 心臓や肝臓、関節の検査について、繁殖者に親犬の状況や家系を確認できたか
- 生涯にわたる飼育費用の備えがあるか。大型犬は食費や医療費の負担も大きくなります。費用の目安は犬の生涯費用はいくら?が参考になります
同じ視覚で獲物を追う猟犬のグループに興味がある人は、ボルゾイやウィペットのページも比べてみてください。
よくある質問
- アイリッシュウルフハウンドはアパートやマンションでも飼えますか?
-
体高79cm以上にもなる超大型犬のため、集合住宅での飼育は現実的に難しい場合が多いです。ペット可でも大型犬の頭数・体重の制限がある場合があります。屋内で自由に動けるスペースと、十分に運動できる環境がある一戸建てが理想的です。
- アイリッシュウルフハウンドは初心者でも飼えますか?
-
性格は穏やかで、しつけに素直な子も多いですが、体が大きく力が強いため、基本のしつけは必須です。住環境や医療面の負担も大きいため、時間と体力、周囲の協力が得られる環境かをよく検討してください。
- 寿命が短いと聞きましたが、少しでも長生きさせる方法はありますか?
-
心臓や骨の傾向が知られているため、定期的な健康診断と体重管理が大切です。食事前後の激しい運動を避ける、成長期は大型犬向けの食事で急成長を防ぐなど、日々の積み重ねが健康に過ごせる時間を支えます。
- 子犬の成長期に特に気をつけることはありますか?
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超大型犬は成長スピードが早く、骨格や関節に負担がかかりやすいため、成長期の激しい運動やジャンプは避け、大型犬用の成長期向けフードで栄養バランスを整えることが大切です。滑りやすい床や階段の上り下りにも注意しましょう。
まとめ
- アイリッシュウルフハウンドは、体高79cm以上の、サイトハウンドの中でも最も大きく背が高い犬種
- 優しく穏やかな性格で「家の中では子羊」。ただし獲物を追う本能もある
- 運動は1日1〜1.5時間ほどが目安。成長期は関節への負担に特に注意
- 被毛のお手入れは週1回のブラッシングと、年に数回のストリッピングが目安
- 心臓・骨・胃の傾向を知り、日々のチェックと定期健診を大切に
- 寿命は6〜9年ほどと短めと言われ、元気なうちから備えて、限られた時間を大切に過ごしましょう
この記事の執筆者
ルーク隊長(犬のまとめ 運営者)
子どもの頃から20年以上、犬との暮らしを続けている犬好き。身内にペットトリマー・ドッグトレーナーがおり、日常的に多くの犬と接する環境にある。



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