愛犬が突然倒れて手足をガクガクと痙攣させる——初めててんかん発作に遭遇すると、多くの飼い主さんはパニックになってしまいます。しかし、あらかじめ正しい知識を持っておくことで、いざという時に落ち着いて対応できます。この記事では、てんかん発作の症状から、発作中にすべきこと・やってはいけないこと、病院に行くべき目安までをまとめて紹介します。
てんかん発作とはどんな状態か


てんかん発作は、脳の神経細胞が一時的に異常な興奮状態になることで起こります。犬で最も多く見られるのは、突然意識を失って倒れ、全身をガクガクと震わせる「全身性発作」です。原因は、検査をしても脳に明らかな異常が見つからない「特発性てんかん」(遺伝的な要因が関わっているとされる)のほか、脳自体の病気や、中毒・代謝異常などが引き金になる場合もあります。
発作の前兆と症状


発作の前には、いつもより甘えてくる、そわそわして落ち着かない、安全な場所から離れたがらないといった、普段と違う様子が見られることがあります。発作そのものが始まると、意識を失って倒れる、手足を突っ張らせたり痙攣させたりする、口をペチャペチャ鳴らす、よだれを大量に垂らす、排泄をしてしまうといった症状が見られます。多くの場合、発作の持続時間は1〜2分程度です。
発作が起きたときにすべきこと


愛犬が発作を起こしたら、まず落ち着いて次のことを行いましょう。
- 時間を計る:発作が始まった時刻を確認し、どのくらい続いているかを把握します。
- 周囲の危険物をどける:階段の近くや家具の角など、体をぶつけてケガをしそうな場所からは離し、周囲にあるものを片付けます。
- できれば動画を撮る:スマートフォンで発作の様子を撮影しておくと、後で獣医師に症状を正確に伝える際に役立ちます。
絶対にやってはいけないこと


てんかん発作への対応でよくある誤解が、「舌を噛まないように口に何かをくわえさせる」というものです。これは古い誤った情報で、実際には犬が舌を噛みきってしまうことはほとんどなく、発作中に口元に手を近づけると、意識のない状態の犬に強く噛まれてしまう危険があります。発作中は口元には触れないようにしましょう。また、大声で名前を呼んだり、体を揺さぶって起こそうとしたりするのも避けてください。刺激を与えることで、かえって発作が長引く可能性があります。愛犬のそばで、静かに見守りながら時間を計るのが基本の対応です。
何分続いたら病院に行くべきか


通常、発作は1〜2分程度で自然に収まりますが、次のような場合は緊急性が高く、すぐに動物病院へ連絡・受診してください。
- 発作が5分以上続いている:これは「重積発作」と呼ばれる危険な状態で、脳へのダメージや体温上昇により命に関わることがあります。
- 発作と発作の間に意識が完全に戻らないまま繰り返す
- 24時間以内に発作を2回以上繰り返す(群発発作):1日に何度も発作が起こると体への負担が大きく、重積発作に移行するリスクも高まります。
普段からスマートフォンなどで時間を計る習慣をつけておくと、「長引いているかどうか」を客観的に判断しやすくなります。
発作後の様子と治療について


発作が収まったあとは、ぼんやりして反応が鈍い、うまく歩けない、一時的に目が見えていないような様子が見られることがあります。多くの場合は時間とともに回復しますが、この状態が普段よりも長く続く場合は、追加の受診を検討しましょう。てんかんと診断された場合、多くは抗てんかん薬による長期的な発作予防が治療の中心となります。自己判断で薬の量を変更したり、勝手に中止したりせず、かかりつけの獣医師の指示に従って治療を続けることが大切です。
てんかんの診断と、発作を起こしやすい犬種


てんかんは、発作の様子だけでは診断できません。動物病院では、血液検査で低血糖や肝臓・腎臓の病気、中毒などの「脳以外の原因」を除外し、必要に応じてMRI検査で脳腫瘍や炎症などの「脳の病気」を調べます。それらがすべて見つからない場合に「特発性てんかん」と診断されます。特発性てんかんは、生後6か月〜6歳頃の若い犬で最初の発作が起こることが多く、ビーグル、ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバー、ボーダーコリー、シェットランドシープドッグ、シベリアンハスキー、柴犬などで比較的多いとされています。逆に、7歳以降に初めて発作が起きた場合は、脳腫瘍などの別の病気の可能性が高まるため、より詳しい検査が勧められます。
発作の記録のつけ方と、日常生活での注意点


治療の方針は「発作の頻度と重さ」で決まるため、発作日記をつけることがとても重要です。記録する項目は、日付と時刻、発作の持続時間、発作の様子(意識の有無、体のどの部分がどう動いたか)、発作前の様子、発作後に回復するまでの時間、その日の出来事(来客、天候、寝不足、食事の変化など)です。動画があれば、それも保存しておきましょう。日常生活では、発作の引き金になりやすい強いストレスや極端な疲労、寝不足を避け、規則正しい生活を心がけます。水辺や高い場所、階段の近くでの留守番は、発作時の事故につながるので避けてください。抗てんかん薬は決まった時間に毎日飲ませることが大切で、自己判断で減らしたりやめたりすると、重積発作を引き起こすことがあります。薬を飲んでいる犬は、定期的な血液検査で薬の血中濃度と肝臓の値を確認します。
よくある質問


Q. てんかんは治りますか?
A. 特発性てんかんは完治する病気ではありませんが、抗てんかん薬で発作の頻度と重さを抑え、普通の生活を送ることは十分に可能です。治療の目標は「発作をゼロにする」ことではなく、「発作の回数を減らし、重積発作を防ぐ」こと。薬で発作がコントロールできている犬の多くは、健康な犬と変わらない寿命を全うします。
Q. 一度発作があったら、すぐに薬を始めるべきですか?
A. 1回だけの発作で、その後しばらく起こらなければ、すぐには投薬を始めず経過を見ることもあります。一般的に、発作が数か月に1回以上の頻度で起こる、群発発作や重積発作があった、発作後の回復が遅い、といった場合に投薬開始が検討されます。獣医師と相談して決めてください。
Q. 発作中に体を抱きしめて落ち着かせてもいいですか?
A. 発作中の犬は意識がなく、抱きしめても落ち着くことはなく、反射的に噛まれる危険があります。体をぶつけないよう周囲を片付け、頭の下に柔らかいタオルを敷く程度にとどめ、口や顔には触れないでください。発作が収まり、意識が戻ってから、静かな声で優しく声をかけてあげましょう。
まとめ


犬のてんかん発作は、突然のことで飼い主を驚かせますが、多くは1〜2分で自然に収まります。発作中は口元に触れず、大声を出さず、時間を計りながら静かに見守ることが基本です。5分以上続く場合や群発発作が見られる場合は、迷わず動物病院に連絡しましょう。あらかじめ正しい対応を知っておくことが、いざという時に愛犬を守る一番の備えになります。
この記事の執筆者
ルーク隊長(犬のまとめ 運営者)
子どもの頃から20年以上、犬との暮らしを続けている犬好き。身内にペットトリマー・ドッグトレーナーがおり、日常的に多くの犬と接する環境にある。


コメント