犬が穴を掘るのは、狩りや巣作りの名残である本能のほか、暑さしのぎ、退屈、不安、脱走などが重なって起こる行動です。掘る場所によって理由はある程度見当がつき、庭なら「掘ってもいい場所」を作って誘導するのが現実的な対策になります。叱って止めようとしても、原因が残っているかぎり別の場所で再開しがちです。ただ、それまで掘らなかった犬が急に激しく掘り始めたときは、体調や心の問題が隠れていることがあるので動物病院に相談しましょう。



ひとつずつ、やさしく整理していくね。
💡 犬はなぜ穴を掘る?主な6つの理由
「犬が穴を掘る」と一口にいっても、背景にある気持ちは一つではありません。米国の動物愛護団体Humane World for Animals(旧ヒューメイン・ソサエティ)や、AKC(アメリカン・ケネル・クラブ)の情報を紹介するHill’s Petの解説を参考にすると、理由はおおむね次の6つに整理できます。


| 理由 | 背景 | よくある状況 |
|---|---|---|
| 本能(狩り・習性) | 野生の祖先から受け継いだ行動。地中の小動物を追う仕事をしてきた犬種ほど強い | 土の下の音やにおいに反応して、特定の場所を掘る |
| 涼む・身を守る | 暑い日は冷たい土を求め、寒さや風雨をしのぐ場所を探すこともある | 夏の日陰や、木の根元に穴を作る |
| 退屈・エネルギーの発散 | 運動や刺激が足りないと、掘ること自体が遊びになる | 長時間ひとりで庭にいる、子犬や若い犬 |
| 不安・ストレス | 落ち着かない気持ちを紛らわす行動として出ることがある | 留守番中や、環境が変わった直後 |
| 宝物を隠す | おもちゃやおやつを土に埋めて、あとで掘り返す | 外に持ち出したものがなくなる |
| 脱走・何かに近づきたい | フェンスの外にある何かへ行こうとして、地面を掘り進める | 柵の下や塀沿いに穴ができる |
このほか、掘ると飼い主が反応してくれると学習して、注目を集めるために掘る子もいます。Humane Worldは、叱ることも犬にとっては「注目」になりうると指摘しています。
本能は「やめさせる」より「出し場所を作る」
Hill’s Petの解説では、穴掘りは野生の祖先から受け継いだ行動で、「すべての犬がある程度は掘る」とされています。つまり、掘ること自体は異常ではなく、犬という動物にとって自然な行動です。
完全にゼロにしようとするより、掘っても困らない場所で満たしてあげるほうが、犬にも飼い主にも負担が少なく済みます。
掘る場所でわかる?見分けのヒント
理由を一つに絞るのは難しいものの、どこを掘っているか、どんな様子かを観察すると、見当をつけやすくなります。あくまで目安として使ってください。
| 掘る場所・様子 | 考えられる理由 | まず試したいこと |
|---|---|---|
| 庭の同じ一点、木や低木の根元 | 地中の虫や小動物への反応(狩りの本能) | 庭に巣穴や虫の気配がないか確認し、毒性のある駆除剤は使わない |
| 日陰や、風通しのよい涼しい場所 | 暑さしのぎ | 屋内で過ごす時間を増やし、日陰と水を用意する |
| 柵や塀の下、外が見える場所 | 脱走、外の何かに近づきたい気持ち | 柵の下の補強と、犬が気になっている対象の確認 |
| 庭のあちこちを手当たり次第 | 退屈、エネルギーの余り | 散歩や遊びを増やし、庭に長時間ひとりにしない |
| ソファ・ベッド・布団・カーペット | 寝床を整える習性、においづけ、気持ちの切り替え | 掘りにくい素材や置き方の工夫(後述) |
| 留守中だけ、玄関やドア付近 | 不安、出ていきたい気持ち | 留守番の過ごし方を見直す |
庭の穴の様子にも手がかりがあります。Humane Worldによると、木や低木の根元、あるいは道のように連なった掘り跡は、地中の動物や虫を追っているサインのことがあります。フェンス沿いにだけ穴があるなら、脱走を疑ってください。
掘りやすい犬種や状況はある?
Hill’s Petの解説では、狩猟の血が濃いテリア種や、ダックスフンドのような小型の猟犬は、地中の獲物を追う仕事をしてきた背景から、特に掘りやすい犬種として挙げられています。また、シベリアンハスキーのように厚い被毛をもつ大きな犬は、涼を取るために掘ることがあるとされています。
犬種に限らず、掘る行動が強まりやすい状況もあります。
- 庭に長時間、ひとりで出されている
- 庭におもちゃや遊び相手がなく、刺激が少ない
- 子犬や若い犬で、エネルギーが余っている
- 飼い主が庭いじりをしているのを見ていて、土を掘ることに興味をもった
最後の例は意外に思えるかもしれませんが、Humane Worldが原因の一つとして挙げています。犬は「飼い主がやっていること」をよく見ています。
🏥 急に掘り始めたら要注意|病気や心の問題のサイン
それまでほとんど掘らなかった犬が、急に激しく、しつこく掘るようになったときは、単なる習性とは限りません。
- 痛みやかゆみ:体の不快感から、ソファや床をひっかくように掘ることがあります。皮膚や関節の不調が隠れていないか確認したい場面です。
- 不安・ストレス:引っ越し、家族構成の変化、留守番の増加などがきっかけになることがあります。
- 高齢犬の認知機能の低下:イリノイ大学獣医学部の解説では、犬の認知機能の低下で見られるサインとして、睡眠リズムの乱れ、徘徊や見当識の混乱、不安、活動量の変化、同じ動作の繰り返しなどが挙げられています。ただし、これらのサインがあっても認知症とは限らず、痛みや不安、ほかの病気が原因のこともあると説明されています。
運営者は獣医師ではないため、掘る行動から病気を判断することはできません。次のような様子があるときは、様子見をせず動物病院に相談してください。
- 数日〜数週間のうちに、掘る頻度や激しさが明らかに増えた
- 掘りながら足先を舐める、爪が傷つく、出血している
- 夜間に落ち着かず、同じ場所を何度も掘る・ぐるぐる歩く
- 食欲や元気がない、トイレの失敗が増えたなど、ほかの変化もある
受診の際は、いつごろから、どんな場所で、1日にどのくらい掘るかをメモや動画に残しておくと伝わりやすくなります。高齢犬の変化については、老犬介護完全ガイドも参考になります。
💡 足先を舐めるクセも一緒に出ていませんか
掘る行動に加えて、足先を気にして舐めている場合は、肉球や指の間のトラブルが隠れていることもあります。なぜ犬は足を舐める?行動の意味と注意点もあわせてどうぞ。
🔧 庭を守る対策|「掘ってもいい場所」の作り方


掘る習性は消せないので、庭での基本方針は「掘っていい場所を決め、そこへ誘導する」ことです。Humane Worldも、よく掘る犬には専用の掘り場(ディギングゾーン)を設けることを勧めています。
掘り場の作り方と教え方
- 場所を決める:庭の一角に、やわらかい土や砂を入れたスペースを作ります。子ども用の砂場を使う方法もあります。
- 安全なおもちゃを浅く埋める:犬が見つけて掘り出せる程度に埋めておくと、そこが「楽しい場所」になります。
- 掘ったら褒める:掘り場で掘ったときに、声をかけて褒めます。
- ほかの場所で掘っていたら:大きな音などで中断させて「ダメ」と声をかけ、すぐ掘り場へ連れていきます。
- 掘ってほしくない場所は一時的に近づきにくくする:石や金網を置くなどして、掘っても楽しくない状態にします。
掘り場の土や砂は、清潔なものを選び、犬が食べてしまわないか見守ってください。誤飲が心配なものを埋めるのは避けましょう。
退屈が原因なら、運動と頭を使う遊びを足す
Humane Worldは、1日2回以上の散歩に加え、フェッチなどの遊び、1日5〜10分の簡単なトレーニングやコマンド練習を勧めています。
Hill’s Petでは、エネルギーの多いテリア系の犬は1日30〜60分程度の運動が必要な場合があるとしています。数字はあくまで目安で、犬種・年齢・体力で変わります。
- おやつを詰められる知育おもちゃを、庭に出すときに用意しておく
- おもちゃは日替わりでローテーションして飽きさせない
- においを探す「ノーズワーク」のような、頭を使う遊びを取り入れる
- 庭に出すときは、ひとりきりにせず、目の届く時間を中心にする
暑さしのぎで掘るなら、涼しい居場所を用意する
夏に日陰を掘るのは、土の冷たさを求めている可能性があります。穴を埋めるよりも、日陰、風通し、倒れにくい水入れを用意し、暑い時間帯は室内で過ごさせるほうが安全です。暑さ対策の基本は夏の熱中症対策の記事にまとめています。
脱走が心配なとき|柵の下を補強する
フェンス沿いに穴ができているなら、「かわいい習性」で済ませず、脱走対策を優先してください。道路へ出れば、事故や迷子につながります。Humane Worldは、次のような方法を紹介しています。
- 柵の下に金網(チキンワイヤー)を埋め、先端が尖った部分は庭側に出ないよう内側へ丸めておく
- 柵沿いに、半分ほど埋めた大きな石を並べる
- 柵の下部を30〜60cm(1〜2フィート)ほど地中に埋める
- 金網フェンスの下部を、地面に沿って平らに固定する
同時に、「犬が何に近づこうとしているのか」を探ることも大切です。通りを歩く人や犬、隣家の動物など、外の刺激が理由なら、庭に出す時間や見える範囲を調整すると改善することがあります。留守番中の脱走行動が気になるときは、犬の分離不安症完全ガイドも参考にしてください。
💡 ソファ・ベッド・布団を掘るのはなぜ?室内での対処
室内でソファやベッドをホリホリする行動は、庭の穴掘りと別の理由で出ることも多く、寝る前に寝床を整える習性として説明されることがあります。
野生の犬が草や土を踏み固めて寝床をつくっていた名残といわれ、くるくる回る行動とも近いものです。くわしくは犬はなぜ寝る前にぐるぐる回るの?で解説しています。
寝る前の短いホリホリは害のない習慣のことが多く、無理にやめさせる必要はありません。ただし、生地が傷む、爪が引っかかるなどが気になる場合は、次の工夫ができます。
- 爪を短く整え、引っかかりによるケガや生地の傷みを減らす
- お気に入りの場所には、丈夫なブランケットや、掘っても傷まない敷物をかける
- 掘ってもいい「専用の寝床」を用意し、そこで掘れるようにする
- 寝る前に散歩や遊びで体を動かし、気持ちを落ち着かせる
- カーペットや床を掘るときは、食べこぼしのにおいが残っていないか確認する
ひとしきり掘ったあとに落ち着いて眠るなら問題ない一方、長時間続く、止められない、掘りながら鳴くといった様子があれば、前の章で触れた不安や痛みの可能性を考えて相談してください。
やってはいけない対応
- 掘ったあとに叱る:犬は、何で叱られたのかを理解できません。Humane Worldは、事後の罰は原因を解決せず、恐怖や不安から掘っている場合は悪化させることがあると述べています。
- 穴に水を入れたり、犬を穴の近くにつないだりする:犬にとって嫌な体験になるだけで、掘る理由は残ります。
- 毒性のある駆除剤や忌避剤を使う:地中の虫や小動物を追い払う目的で薬剤を使うと、犬自身が舐めたり食べたりして中毒を起こすおそれがあります。Humane Worldは、野生動物に有害なものは犬にも有害だと注意しています。
- 穴を埋めるだけで終わりにする:理由が解決されないと、別の場所に新しい穴ができます。
誤飲や中毒が心配なときの対応は犬の誤飲・誤食完全ガイドにまとめています。
よくある質問


Q. 掘る行動を完全にやめさせることはできますか?
A. 本能に根ざした行動のため、完全になくすのは難しいことが多いです。「やめさせる」よりも、「掘ってもいい場所に誘導する」と考えるほうが、犬のストレスも少なく現実的です。運動や遊びが足りていれば、掘る頻度が減ることはあります。
Q. 子犬のうちから掘り癖がつかないようにする方法はありますか?
A. 完全に防ぐのは難しいものの、十分な運動と遊びでエネルギーを発散させ、掘ってもいい場所を早くから用意しておくと、庭全体やソファなど特定の場所を掘る習慣がつきにくくなります。庭にひとりで長時間出さないことも大切です。
Q. 夏だけ穴を掘るのは、暑いからですか?
A. 暑さをしのごうとしている可能性があります。Hill’s Petの解説では、厚い被毛の犬は涼を取るために掘ることがあるとされています。日陰や水、風通しのよい居場所を整え、猛暑の時間帯は室内で過ごさせてください。穴の中でぐったりしている、呼吸が荒いなどの様子があれば、熱中症の恐れもあるので、すぐに涼しい場所へ移して動物病院に連絡しましょう。
Q. 掘るのをやめさせるグッズや忌避剤は使っていいですか?
A. 化学物質や刺激の強い薬剤は、犬が舐めたり吸い込んだりするおそれがあるため、おすすめしません。物理的な対策(金網や石で近づきにくくする)と、掘り場づくり、運動量の見直しのほうが安全です。それでも改善しないときは、しつけの専門家や動物病院に相談しましょう。
まとめ


- 穴を掘る理由は、本能、暑さしのぎ、退屈、不安、宝物を隠す、脱走など複数ある
- 掘る場所(庭の一点・日陰・柵の下・ソファなど)で、理由の見当がつく
- 庭では「掘ってもいい場所」を作って誘導し、運動と遊びを増やす
- 柵の下に掘り跡があれば、金網や石で脱走対策を優先する
- 叱る・毒性のある薬剤を使うといった対応は避ける
- 急に激しく掘り始めた、高齢犬で変化があるときは、動物病院に相談する
掘る行動は、犬が持つ本来の習性の一つです。叱って押さえつけるより、安全に満たしてあげる方向で付き合っていくと、庭もソファも守りやすくなります。
この記事の執筆者
ルーク隊長(犬のまとめ 運営者)
子どもの頃から20年以上、犬との暮らしを続けている犬好き。身内にペットトリマー・ドッグトレーナーがおり、日常的に多くの犬と接する環境にある。



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