犬と避難するときの言葉には「同行避難」と「同伴避難」があります。環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン」では、同行避難は犬を連れて安全な場所まで避難する行動、同伴避難は避難所で犬を世話しながら過ごす状態を指す、と整理されています。どちらも「人と犬が同じ部屋で過ごせる」という意味ではありません。備蓄の目安は、ペットフードと水を少なくとも5日分(できれば7日分以上)です。
2026年11月8日に環境省の公開資料で確認した内容です。ニュースではなく、いつ読んでも使える平常時の備えに絞ってまとめています。環境省のガイドラインは改訂が進んでおり、2026年6月に改訂案への意見募集が行われました(改訂版の公表は、11月8日時点で確認できていません)。改訂版が出たら、内容を見直します。
- 言葉の違いを知る。同行避難は「一緒に避難する行動」、同伴避難は「避難所で世話をして過ごす状態」。同室で過ごせるとは限らない
- フードと水は少なくとも5日分、できれば7日分以上。療法食や薬は優先度がいちばん高い持ち物
- 平常時にやること:キャリー・ケージ慣れ、迷子札とマイクロチップ、ワクチンと健康の記録、写真、避難所の受け入れ確認



まずは言葉の違いから。ここが分かると、何を準備すればいいのかが見えてくるよ。
同行避難と同伴避難は何が違う?
違いは、動きを指すのか、状態を指すのかです。環境省のガイドライン(2018年)の総説では、次のように整理されています。
| 言葉 | 指していること | 押さえたい点 |
|---|---|---|
| 同行避難 | 犬を連れて、指定緊急避難場所などまで移動する避難行動 | 避難所で飼い主が犬と同じ部屋で過ごすことを意味しない |
| 同伴避難 | 避難所で、被災した人が犬を世話しながら過ごす状態(内閣府の「避難所運営ガイドライン」で使われている言葉) | こちらも同室で過ごせるという意味ではなく、犬の飼養環境は避難所ごとに異なる |
つまり、犬を連れて避難所に着くところまでが同行避難、着いたあとにどこでどう過ごすかが同伴避難の話です。着いたあとの過ごし方は、避難所や自治体のルールで変わります。
避難所での犬の過ごし方は、いくつかの形がある
環境省の「一般飼い主編」の避難フロー図には、受け入れがある避難所での飼養環境の例が示されています。どの形になるかは避難所の事情によります。
| 過ごし方の例 | イメージ |
|---|---|
| 室内で同居 | 人と犬が同じ室内で過ごす |
| 同じ室内で、飼う人と飼わない人が分かれる | 犬を飼う人のスペースを分けて、同じ室内で過ごす |
| 室内で別居 | 犬用の部屋(ペット飼養部屋)で過ごし、人とは別の部屋になる |
| 敷地内の屋外で飼養 | 避難所の敷地内の屋外に犬のスペースが設けられる |
避難所に犬を入れない(入れられない)場合の選択肢として、同じフロー図には、自宅で過ごす在宅避難、車やテントを使う、知人や施設に預ける、といった道筋も描かれています。自治体によっては、頑丈な建物にお住まいの人に在宅避難をすすめているところもあるため、避難のあり方は事前に確認しておく必要があります。
犬の防災グッズは何日分?何をそろえる?
環境省の「一般飼い主編」では、ペットフードと水は少なくとも5日分(できれば7日分以上)が例として挙げられています。ガイドラインの総説は、災害の発生当初は人の救護が中心になるため、ペットフードや水の支援さえ難しいことが多いと述べています。
水の量やフードの量は、犬の体格や季節で変わります。環境省の資料には具体的な水量の記載を確認できなかったため、かかりつけの動物病院に目安を聞いておくのがおすすめです。備蓄にかかる費用は犬の防災備蓄にかかる費用の記事も参考にしてください。
優先1:犬の健康と命に関わるもの
- 療法食・薬(持病がある場合は、処方内容のメモもあわせて)
- ペットフードと水(少なくとも5日分、できれば7日分以上)
- キャリーバッグまたはケージ
- 予備の首輪とリード(伸びないタイプ)
- ペットシーツ、排泄物の処理用具、トイレ用品
- 食器
優先2:情報(紙とスマホの両方に)
- 飼い主の連絡先と、飼い主以外の緊急連絡先・預け先
- 犬の写真(印刷したものと、スマホに保存したもの)
- ワクチンの接種状況、既往症、投薬中の薬、検査結果、健康状態、かかりつけ動物病院の情報
優先3:あると助かるもの
- タオル、ブラシ
- ウェットタオルや清浄綿(目や耳の掃除にも使える)
- ビニール袋(排泄物の処理など幅広く使える)
- においのついた、お気に入りのおもちゃなど
- ガムテープとマジック(ケージの補修や、犬の情報の掲示に使える)
上の3つの区分は、環境省「一般飼い主編」の「ペット用の備蓄品と、持ち出す際の優先順位の例」をもとに、犬に関係する項目を抜き出して書き直したものです。
- 備蓄のフードは、ふだん食べ慣れているものにする。環境省の資料でも、支援物資のフードを食べなくて困った例が挙げられている
- 新しい銘柄を備蓄にするときは、平常時に少しずつ試して食べ方を確認しておく
- 賞味期限が近いものからふだんのごはんに回し、買い足していく方法もある(期限の管理がしやすい)
- 持ち出し用と自宅備蓄用を分けておく。持ち出し用は、人の防災バッグの近くにまとめておくと取り出しやすい
平常時にしておく備えは?キャリー慣れ・身元・健康記録
環境省の「一般飼い主編」は、平常時の対策として、しつけと健康管理、行方不明にならないための対策、避難用品や備蓄品の確保、情報収集と避難訓練などを挙げています。ここでは、犬の飼い主が今日から始めやすいものを順に整理します。
1. キャリー・ケージに慣れておく
環境省の資料は、犬がケージなどに入ることを嫌がらないよう、ふだんから慣らしておくことを挙げています。過去の例として、ケージに慣れていないために犬へ過度なストレスがかかってしまった、という困りごとも挙げられています。
- ふだんの生活の場所にキャリーやケージを置き、扉を開けたまま自由に出入りできるようにする
- 中でおやつやごはんをあげて、「ここは嫌な場所ではない」と覚えてもらう
- 扉を閉める時間を、数秒から少しずつ延ばす
- キャリーに入れた状態で持ち上げたり、移動したりすることにも慣らす
上の手順は進め方の一例です。犬によって進み方は違うため、嫌がるときは無理をせず、段階を戻してください。
段階的な進め方は犬のクレートトレーニング完全ガイドに詳しくまとめています。キャリー選びは犬のお出かけ用品の比較も参考になります。
2. 迷子にならないための身元の明示
環境省の資料は、犬の場合の身元の明示として、次の3つを挙げています。
- 首輪と迷子札
- 鑑札と狂犬病予防注射済票(狂犬病予防法で、犬への装着が義務づけられているものです)
- マイクロチップ(入れたら、飼い主情報と犬の情報の登録が必要)
マイクロチップは、迷子の犬が保護されたときに読み取りで飼い主へ連絡できる仕組みです。ただし、登録の情報が古いままだと連絡がつきません。引っ越しや電話番号の変更があったときは、登録の変更も忘れないようにしましょう。
くわしくは犬のマイクロチップ完全ガイド、犬の登録手続きの流れ、犬が迷子になったときの探し方と予防策で解説しています。
3. ワクチンと健康の記録を整える
環境省の資料は、狂犬病予防接種(毎年1回、義務)に加えて、各種ワクチンの接種、寄生虫の予防と駆除を挙げています。多くの犬が集まる場では、接種していない動物がいて感染が心配だった、という声も過去の例として紹介されています。
どのワクチンや予防が必要かは、犬の年齢や暮らし方で変わります。かかりつけの動物病院で相談してください。接種状況や既往症、飲んでいる薬の情報は、前の章の「優先2」のとおり、紙とスマホの両方にまとめておくと持ち出しやすくなります。ワクチンの基本は犬のワクチン完全ガイドを参考にしてください。
4. 写真と、基本のしつけ
- 犬の全身がわかる写真を、印刷とスマホ保存の両方で用意する。一般的な工夫として、飼い主と一緒に写った写真もあると、保護されたときに飼い主だと伝えやすい
- 「待て」「おいで」「お座り」「伏せ」など、基本の指示に従えるようにしておく
- 必要以上に吠えない、決められた場所で排泄できる、といった習慣も、避難先での負担を減らす
避難所で犬と過ごせる?自治体に確認しておきたいこと
避難所で犬を受け入れるかどうか、どんな形で受け入れるかは、自治体や避難所ごとに違います。環境省の「ペットの災害対策」ページでも、お住まいの地域の指定避難所がペットを受け入れるかを、あらかじめ確認するよう呼びかけています。お住まいの市区町村の防災担当窓口や公式サイトで、最新の案内を確認してください。
- 近くの指定避難所は、犬の受け入れがあるか
- 受け入れがある場合、犬はどこで過ごすことになるか(同室、別室、屋外など)
- 受け入れできる動物の種類・頭数・大きさの決まりがあるか
- ワクチン接種の証明など、受け入れに必要な書類や持ち物があるか
- 受け入れがない場合の選択肢(在宅避難、ほかの避難先など)がどう案内されているか
環境省の資料は、避難訓練のときにも、受け入れ可能な避難所の把握、避難所までの所要時間、道が通れないときの別の道、避難所での犬の反応の確認などを挙げています。地域の避難訓練に参加できるときは、犬を連れて歩いてみると、当日のイメージがつかみやすくなります。
やりがちな落とし穴
- 「同行避難=避難所の部屋で一緒に過ごせる」と思い込み、事前に自治体へ確認しない
- 避難先ではじめてキャリーやケージに入れる(ふだんから慣らしておく)
- リードが伸びるタイプのまま避難する(環境省の例では、予備は伸びないタイプ)
- 備蓄をフードだけにして、水や食器を忘れる
- 自分の安全を確保する前に、犬を探しに戻ろうとする(環境省の資料は、飼い主自身の安全の確保が犬を守ることにつながると述べています)
- 犬だけを車内に長く残す(車内の温度に注意が必要で、長く離れるときは安全な場所に移す)
動物病院に相談する目安
備えの段階では、次のことを動物病院に相談しておくと、いざというときに役立ちます。
- 持病や、毎日飲んでいる薬がある:予備をどれだけ持っておくとよいか、処方内容のメモの作り方
- 療法食を食べている:通常のフードより長めの備蓄が必要か、切り替えの方法
- ワクチンや寄生虫の予防の時期が分からない:接種歴と、今後の予定
避難や環境の変化のあとに、食欲がない、水を飲まない、下痢や嘔吐が続く、ぐったりしている、震えが止まらないといった様子があるときは、早めに動物病院へ相談してください。避難先で診てもらえる場所が分からない場合は、避難所の担当者や自治体に聞くことも考えられます。
よくある質問
- 同行避難をすれば、避難所で犬と同じ部屋で過ごせますか?
-
同じ部屋で過ごせるとは限りません。環境省のガイドラインでは、同行避難は犬を連れて避難する行動を指し、避難所で同室で飼養することを意味しないと説明されています。同伴避難という言葉でも同じで、犬の飼養環境は避難所ごとに異なります。事前に自治体へ確認してください。
- 犬のフードと水は、何日分を備蓄すればいいですか?
-
環境省の「一般飼い主編」では、ペットフードと水を少なくとも5日分(できれば7日分以上)としています。療法食が必要な場合や持病がある場合は、必要な量をかかりつけの動物病院に相談してください。
- マイクロチップを入れていれば、迷子札はいりませんか?
-
環境省の資料は、首輪と迷子札、鑑札と狂犬病予防注射済票、マイクロチップを、身元の明示としてそれぞれ挙げています。マイクロチップは読み取りの機器と登録情報があって役に立つ仕組みなので、目で見て分かる迷子札や鑑札と合わせて備えておくのが一つの考え方です。
- 避難所に犬を連れて入れないときは、どうすればいいですか?
-
環境省の避難フロー図には、自宅で過ごす(在宅避難)、車やテントを使う、知人や施設に預ける、といった選択肢が描かれています。預け先は、条件や期間、費用を確認し、複数探しておくことが望ましいとされています。
まとめと出典・確認日
同行避難は犬を連れて逃げる行動、同伴避難は避難所で犬を世話しながら過ごす状態です。どちらも、避難所で人と犬が同室で過ごせるという意味ではないため、お住まいの自治体の方針を事前に確認しておくことが大切です。そのうえで、フードと水を少なくとも5日分、キャリーやケージへの慣れ、迷子札・鑑札・マイクロチップ、ワクチンと健康の記録、写真をそろえておきましょう。
あわせて読みたい記事として、犬のための防災対策|防災グッズと避難時のしつけもあります。
- 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」総説(2018年3月):同行避難・同伴避難の定義、飼い主の責務、在宅避難について
- 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン<一般飼い主編>」(2018年9月):平常時の対策、備蓄品の優先順位の例(フード・水は少なくとも5日分、できれば7日分以上)、避難フロー図
- 環境省「ペットの災害対策」:指定避難所の受け入れの確認、ケージに慣らすこと
- 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」掲載ページ:ガイドライン全体の入口
確認日:2026年11月8日。この日時点で、環境省のページに掲載されている最新のガイドラインは2018年3月公表のものです。
確認できなかった点:水の具体的な量の目安は、環境省の資料で確認できませんでした。環境省のサイトには、ガイドライン改訂版の原稿案を掲載した資料もありますが、正式な改訂版の公表は2026年11月8日時点で確認できていません。公表された場合は用語や目安が変わる可能性があるため、環境省のページで最新版をご確認ください。避難所での受け入れの方法は自治体ごとに異なります。
この記事の執筆者
ルーク隊長(犬のまとめ 運営者)
子どもの頃から20年以上、犬との暮らしを続けている犬好き。身内にペットトリマー・ドッグトレーナーがおり、日常的に多くの犬と接する環境にある。


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