子犬を迎えると必ず案内される「ワクチン接種」。何種類もあるうえに、子犬のうちは何度も病院に通う必要があり、「結局どれが必要で、いつまで続ければいいの?」と混乱してしまう飼い主さんも多いはずです。この記事では、犬のワクチンの基本的な種類から、接種スケジュール、そして知っておきたい副反応の注意点までを整理して解説します。
犬のワクチンには「混合ワクチン」と「狂犬病ワクチン」の2種類がある


犬に接種するワクチンは、大きく分けて「混合ワクチン」と「狂犬病ワクチン」の2つです。混合ワクチンは、犬ジステンパーウイルスや犬パルボウイルスなど、複数の感染症をまとめて予防するためのワクチンで、飼い主の判断で接種を選択します。一方の狂犬病ワクチンは、狂犬病予防法という法律によって、すべての飼い主に接種と市区町村への登録が義務付けられている点が大きく異なります。
混合ワクチンの種類:5種・6種・8種・10種の違い


混合ワクチンの「5種」「8種」「10種」といった数字は、そのワクチンが予防できる感染症の数を表しています。ワクチンで予防する感染症は、大きく2つに分類されます。
- コアワクチン:犬ジステンパー、犬パルボウイルス感染症、犬アデノウイルス感染症など、生活環境にかかわらずすべての犬に接種が推奨される、重要度の高い感染症です。
- ノンコアワクチン:レプトスピラ症やパラインフルエンザなど、生活環境や地域によって感染リスクが変わる感染症です。よく散歩やドッグランに行く、他の犬と接する機会が多いといった犬には、ノンコアワクチンを含む種類が推奨されることがあります。
愛犬にどの種類が適しているかは、生活スタイルや地域の感染リスクによって変わるため、かかりつけの獣医師と相談して選ぶのが基本です。
子犬の接種スケジュールと、なぜ複数回打つ必要があるのか


子犬のワクチン接種は、生後6〜8週齢頃に1回目を行い、その後2〜4週間隔で、生後14〜16週齢頃までに合計3回ほど接種するのが一般的なスケジュールです。「なぜ1回で済ませられないのか」と疑問に思う方も多いですが、これには理由があります。生まれたばかりの子犬は、母犬の初乳から「移行抗体」と呼ばれる免疫を受け継いでおり、これが感染症からある程度守ってくれる一方で、ワクチンの効果自体も妨げてしまう性質があります。移行抗体がいつ消えるかは子犬によって差があるため、タイミングを変えながら複数回接種することで、移行抗体が消えたあとにしっかり免疫をつけられるようにしているのです。
成犬になってからの接種頻度


子犬期の一連の接種が終わったあとは、年に1回の追加接種が基本とされてきましたが、近年ではコアワクチンについて3年に1回程度の接種で十分とするガイドラインも国際的に示されています。ただし、これは犬の健康状態や生活環境、使用するワクチンの種類によっても異なるため、最終的にはかかりつけの獣医師と相談しながら、その子に合った頻度を決めることが大切です。
狂犬病ワクチンは法律上の義務


混合ワクチンとは異なり、狂犬病ワクチンは狂犬病予防法により、生後91日以上の犬を飼う場合、飼い始めてから30日以内に市区町村へ犬の登録を行い、年1回の狂犬病予防注射を受けさせることが義務付けられています。正当な理由なくこれを怠った場合、20万円以下の罰金の対象となる可能性がある点も、他の任意接種のワクチンとの大きな違いです。毎年案内が来る自治体の集合注射や、動物病院での個別接種を通じて、忘れずに済ませておきましょう。
接種後の副反応で気をつけたいこと


ワクチン接種後は、まれに副反応が起こることがあります。多くの病院では、接種後15分程度(過去にアレルギー症状を起こしたことがある犬は30分程度)は院内で様子を確認し、接種当日から2〜3日は激しい運動やシャンプーを控えるよう案内されます。副反応として比較的見られるのは、元気消失、食欲不振、発熱、接種部位の腫れなどで、多くは一時的なものです。まれに、接種後30分以内に起こる「アナフィラキシー」と呼ばれる激しいアレルギー反応があり、呼吸が苦しそうになる、顔が腫れる、ぐったりするといった症状が見られた場合は、すぐに動物病院に連絡・受診してください。接種当日は自宅でも愛犬の様子をいつもより注意深く観察しておくと安心です。
ワクチン接種の前後に気をつけたいこと


接種は、犬の体調が良い日に受けるのが基本です。下痢や嘔吐、食欲不振がある日は延期し、当日は午前中の接種がおすすめです。万が一副反応が出ても、その日のうちに病院に連絡・受診できるためです。接種前に、過去の副反応の有無、現在飲んでいる薬、妊娠の可能性、最近の体調の変化を獣医師に伝えてください。接種後2〜3日は、シャンプーやトリミング、激しい運動、ドッグランなど興奮する外出を避け、静かに過ごさせましょう。接種部位にしこりができることがありますが、多くは数週間で消えます。1か月以上残る、大きくなる場合は病院で診てもらってください。
ワクチンが終わるまでの散歩と社会化はどうする?


「ワクチンが全部終わるまで外に出してはいけない」と言われることがありますが、生後3〜4か月頃までの社会化期を完全に室内で過ごすと、成犬になってから怖がりや吠えの問題につながりやすいことがわかっています。感染リスクを避けつつ経験を積ませるには、地面に降ろさず抱っこやスリング、カートで外の景色や音に慣れさせる、ワクチン接種済みで健康な犬とだけ自宅で会わせる、といった方法が有効です。地面を歩く散歩やドッグランは、最終接種から1〜2週間経って免疫がついてからにしましょう。子犬期のしつけの進め方は子犬のしつけ完全ガイドで詳しく解説しています。
よくある質問


Q. ワクチンの費用はどれくらいですか?
A. 混合ワクチンは種類によって1回およそ5,000〜10,000円前後、狂犬病ワクチンは注射料と登録・注射済票の交付手数料を合わせて4,000円前後が目安です(自治体によって異なります)。子犬期は3回接種するため、初年度は混合ワクチンだけで2〜3万円程度を見込んでおくとよいでしょう。
Q. 抗体検査でワクチンの回数を減らせますか?
A. 血液検査で抗体価を測り、十分な免疫が残っていればコアワクチンの追加接種を見送る、という選択肢はあります。高齢犬や過去に副反応が出た犬で検討されることが多い方法です。ただし、ペットホテルやドッグランでは「1年以内の接種証明」を求められることがあるため、利用予定がある場合は事前に確認しておきましょう。
Q. 狂犬病ワクチンを受けなくてもいい犬はいますか?
A. 重い病気や高齢で体力が著しく落ちているなど、獣医師が接種によって健康を損なうおそれがあると判断した場合は、「狂犬病予防注射猶予証明書」を発行してもらい、市区町村に提出することで、その年の接種を猶予できます。自己判断で受けないことは法律違反になるため、必ず獣医師に相談してください。
まとめ


犬のワクチンは、任意接種の「混合ワクチン」と、法律上の義務である「狂犬病ワクチン」の2種類に分かれます。子犬のうちに複数回接種が必要なのは母犬からの移行抗体の影響によるもので、成犬になってからは年1回〜数年に1回程度の頻度で継続していきます。接種後の副反応にも注意を払いながら、愛犬の生活スタイルに合ったワクチン選びをかかりつけの獣医師と相談していきましょう。
この記事の執筆者
ルーク隊長(犬のまとめ 運営者)
子どもの頃から20年以上、犬との暮らしを続けている犬好き。身内にペットトリマー・ドッグトレーナーがおり、日常的に多くの犬と接する環境にある。


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