犬を複数飼うことは、ペットライフに豊かな楽しみをもたらします。しかし、複数の犬を飼うためには準備と覚悟が必要です。今回は、犬の多頭飼いの利点や問題点、スムーズな多頭飼いのためのポイントを詳しく解説します。
多頭飼いに必要な心構え


多頭飼いを成功させるためには、以下の条件をクリアする必要があります。
広い居住スペースの確保
室内や屋外で複数の犬を飼うためには、各犬に十分なスペースを提供することが重要です。犬がリラックスして過ごせる個別のスペースを用意しましょう。広い居住スペースは、犬たちが自由に動き回り、ストレスを感じずに過ごすために不可欠です。
経済的な準備
フード、消耗品、医療費、トリミング費用など、複数の犬を飼うことで発生する費用は一気に増えます。予期せぬ治療費に備える経済的な準備も必要です。多頭飼いは経済的な負担が大きくなるため、計画的な予算管理が求められます。
十分な時間の確保
犬のケアには多くの時間がかかります。食事の準備、散歩、トイレ掃除、ブラッシングなど、1匹ずつ丁寧に世話をする時間を確保しましょう。多頭飼いでは、個々の犬に対する注意と愛情が重要です。
多頭飼いのメリット・デメリット


メリット
社会性の向上
犬は群れで生活する動物です。多頭飼いにより犬同士の交流が増え、自然と社会性が育まれます。犬同士が遊ぶことで、運動量も増え、健康にも良い影響を与えます。
留守番のストレス軽減
飼い主が不在の際も、犬同士が一緒にいることで寂しさや不安が軽減されます。留守番中のストレスが減少し、安心感が増します。
多様な性格を楽しめる
異なる性格や特徴を持つ犬たちとの生活は、毎日が新しい発見の連続です。個々の犬が持つユニークな性格や行動を楽しむことができます。
デメリット
相性問題
犬同士の相性が悪い場合、喧嘩が発生することがあります。慎重に犬同士の相性を見極めることが必要です。新しい犬を迎える際には、適切な紹介方法を用いることが重要です。
愛情の偏り
1匹だけを過度にかわいがると、他の犬にストレスがかかります。全ての犬に平等な愛情を注ぐことが大切です。全ての犬が同等の愛情を受けられるように配慮しましょう。
犬の多頭飼いの費用はどのくらい増える?
多頭飼いを考えるとき、まず気になるのが「費用は2倍になるの?」という点ではないでしょうか。ペットフード協会の「令和7年(2025年)全国犬猫飼育実態調査」によると、犬の1か月の支出総額(医療費を含む)は次のとおりでした。
| 項目(1か月) | 1頭飼育 | 複数頭飼育 |
|---|---|---|
| 支出総額の平均 | 16,030円 | 27,715円 |
| 支出総額の中央値 | 12,000円 | 20,000円 |
| 主食用ドッグフードの平均 | 4,143円 | 7,087円 |
| 主食用ドッグフードの中央値 | 3,000円 | 5,000円 |
平均で比べると、複数頭飼育の支出は1頭飼育の約1.7倍です(筆者の計算)。単純に頭数分の倍にはなっていませんが、1頭のときよりはっきり増えます。年間に直すと、1頭飼育は約19万円、複数頭飼育は約33万円になります(月額×12か月の筆者の単純計算です)。
注意したいのは、この調査の「複数頭飼育」は2頭の家庭も3頭以上の家庭もまとめて集計されていると考えられる点です。「2頭ならちょうど1.7倍」とは言えず、あくまで目安です。また、犬の大きさや年齢、トリミングの頻度、持病の有無によっても大きく変わります。一方、ペトコトのトレーナー解説では、2匹目を迎えると費用はほぼ倍になり、犬種によってはそれ以上かかることもあると考えるよう勧められています。予算を立てるときは、少し多めに見積もっておくと安心です。
- 頭数分かかりやすいもの:フード、混合ワクチンや予防、健康診断、トリミング、犬の登録や狂犬病予防注射、ペットホテルやシッターの利用
- 共有しやすいもの:サークルやゲート、掃除用品、おもちゃの一部(ただし食器や寝床は分けるのが基本です)
- 見落としやすいもの:2頭の年齢が近いと、シニア期の通院や介護が重なること
費用の詳しい内訳と考え方は、犬の多頭飼いの費用は何倍?1頭との違いと家計の考え方や、多頭飼いの費用と時間の現実でも整理しています。お金の面で迷うときは、まず今の1頭にかかっている費用を1年分書き出してみてください。
犬の多頭飼いの相性は?先住犬との組み合わせで見るポイント
多頭飼いがうまくいくかどうかは、先住犬と新しい犬の相性が大きく関わります。相性は会ってみないとわからない面もありますが、事前に考えられるポイントがあります。VCA Animal Hospitals、AKC(アメリカン・ケネルクラブ)、ペトコトの解説をもとにまとめました。
年齢:先住犬が何歳のときに迎える?
ペトコトの解説では、2頭目を迎える時期は、先住犬が3〜8歳くらいがよいとされています。年齢が近すぎると同じ時期に介護が必要になりやすく、離れすぎると若い犬の元気さが先住犬のストレスになりやすいためです。AKCも、先住犬が高齢の場合、子犬の遊びに体力的についていけないことがあると指摘しています。先住犬がシニアの場合は、老犬の先住犬に子犬を迎えて大丈夫?も参考にしてください。
サイズ・運動量・性格
- サイズが近いほうが、遊びの最中のけがが起こりにくいとされています(VCA Animal Hospitals)。小型犬と大型犬の組み合わせでは、大きいほうが悪気なくぶつかっただけでも小さいほうがけがをするおそれがあります
- 運動量や性格が似ている犬同士のほうが、仲のよい相棒になりやすいとAKCは説明しています
- 先住犬が怖がりな場合、2頭目で不安が解消されるとは限りません。AKCは、不安の強い犬の気持ちを落ち着かせる目的で迎えると、新しい犬にも不安が伝わってしまうことがあると注意しています
- 犬同士で遊びたがらない性格の犬は、1頭飼いのほうが合っている可能性もあります(ペトコト)
性別の組み合わせ
VCAによると、性格が最も大切だとしたうえで、オスとメスの組み合わせは深刻な衝突が起こりにくいとされ、行動学者の間ではメス同士で重い攻撃が見られやすいという見方もあるそうです。ペトコトの解説でも、オス同士・メス同士はけんかになりやすい傾向があり、異性のほうが合いやすいとされています。ただし、これは傾向であり、同性でも仲よく暮らす犬はたくさんいます。避妊・去勢の時期や、不妊手術をしていない異性同士の繁殖への備えは、かかりつけの獣医師に相談してください。
相性が合わなさそうなときや、すでにけんかが起きているときの対応は、犬の多頭飼いで喧嘩が起きる原因と対処法で詳しく紹介しています。迎える前の検討には2頭目の犬を迎える前に考えることも役立ちます。
多頭飼いのための準備


独立した居住スペースの用意
犬それぞれにケージやサークルを用意し、個別の居住スペースを確保しましょう。これにより、犬同士のトラブルを防ぎます。個々のスペースがあることで、犬たちは安心して過ごすことができます。
ベッドとクレートの用意
犬にとって快適なベッドやクレートもそれぞれ用意し、犬の大きさに合ったサイズを選びます。各犬が自分の居場所を持つことで、安心感が得られます。
トイレの準備
複数の犬に対応できるよう、十分な数のトイレを用意しましょう。トイレトレーニングがスムーズに進むためにも、犬ごとに専用のトイレがあると安心です。清潔なトイレ環境を維持することが大切です。
多頭飼いでの注意点


食事の管理
犬同士の序列を尊重し、食事を与える順番を守ります。毎食同じ順番で与えることで、犬同士のトラブルを防ぎます。食事中のトラブルを避けるために、個別に食事を与えることが推奨されます。
散歩の方法
基本的には1匹ずつ散歩させるのが理想ですが、時間がない場合は同時に散歩させることもあります。専用のリードを使用するとリードの絡まりを防げます。安全で楽しい散歩を実現するために、適切なリードを選びましょう。
喧嘩の対応
喧嘩が発生した場合、飼い主が介入して止めることが必要です。無言で割り込んで犬を落ち着かせ、再度トラブルが起きないように環境を見直しましょう。冷静に対応し、犬たちのストレスを軽減することが重要です。
多頭飼いで先住犬に配慮したいこと
新しい犬が来ると、先住犬は縄張りや、飼い主さんの注目、ごはん、おもちゃ、お気に入りの寝床を「取られるかもしれない」と感じることがあります。VCA Animal Hospitalsも、先住犬が自分の居場所を奪われたように感じ、縄張りやおもちゃ、人を分け合うことを嫌がる場合があると説明しています。
- 先住犬を優先する:AKCは、あいさつ、リードをつける順番、ごはんを出す順番を、先住犬を先にするといった小さな工夫を紹介しています
- 先住犬との1対1の時間を残す:新入り犬に手をかけすぎず、これまでの散歩や遊びの時間を続けましょう
- 物の取り合いを減らす:食器やベッド、おもちゃを頭数分用意し、食事のあとは食器を片付けます(VCA)。仲がよいと確認できるまで、骨や特別なおやつは出さないほうが安心です(AKC)
- 食事は別の場所で与える:多頭飼いでは食事のトラブルが起こりやすいため、ケージやサークルで犬ごとに場所を分ける方法があります
- うなる様子を頭ごなしに叱らない:VCAは、うなりを叱ると犬が警告のサインを出さなくなり、かえって衝突が読みにくくなるおそれがあると述べています。ただし、本気でかみつこうとする様子があれば、無理にそばに置かず専門家に相談しましょう
先住犬が新入り犬にうなる場合は先住犬が新入り犬にうなる・怒るときの対処、先住犬が無視してなかなか仲よくならない場合は先住犬が新入り犬を無視するときもあわせて読んでみてください。
「序列」にとらわれすぎなくて大丈夫?
多頭飼いでは「先住犬を上に立てる」という言い方がよくされます。ペトコトのトレーナー解説では、オオカミの群れの研究から生まれた「アルファ」という考え方を、そのまま犬と飼い主の関係にあてはめるには限界があるとされています。順位を意識しすぎるより、先住犬の安心感を守ることや、犬ごとの様子をよく観察することを大切にしましょう。詳しくは犬の順位・アルファの俗説の記事で説明しています。
多頭飼いの留守番とお世話の負担は?
多頭飼いの利点として「留守番が楽になる」とよくいわれます。ペトコトの解説でも、犬同士で遊べるため退屈しにくくなる面があるとされています。一方で、お世話の負担は確実に増えます。
- 留守番:下の子が若いうちは、上の子が自由にしていてもストレスをためる場合があります。いたずらがあるときは別々のケージで過ごさせると安心です(ペトコト)。VCAも、飼い主が不在のときは犬同士を分けておくよう勧めています
- 分離不安:下の子が飼い主さんだけでなく兄弟犬にも依存し、上の子が通院などでいなくなると1頭でいられなくなることがあります(ペトコト)。それぞれが1頭でも落ち着いて過ごせる練習をしておきましょう
- 散歩:歩くペースや興味の対象が違うため、1頭のときより難しくなります。慣れるまではドッグランなどで練習し、リードの管理を確実にします(ペトコト)。体力や犬の性格によっては、1頭ずつ歩くほうが安全な場合もあります
- トイレ・寝床:トイレは大きめにする、ベッドやクレートは犬ごとに用意するなどの工夫が有効です
留守番に関する詳しい目安は犬の留守番は何時間まで平気?、分離不安のサインは犬の分離不安症完全ガイドが参考になります。
新しい犬との正しい引き合わせ方
多頭飼いのトラブルの多くは、最初の顔合わせのやり方が原因で起こります。初日からいきなり同じ空間で自由にさせるのは避け、以下のように段階を踏んで慣らしていきましょう。
- 最初はケージ越し、または離れた場所からお互いのにおいを嗅がせる程度から始める
- 対面させるときは双方にリードをつけ、予期せぬ動きにすぐ対応できるようにする
- 対面時間は10分→20分→30分と、様子を見ながら少しずつ延ばしていく
- 無理に近づけたり触れ合わせたりせず、犬同士のペースに任せる
特に先住犬にとっては、テリトリーに新しい犬が入ってくることは大きなストレスになり得ます。先住犬を優先して可愛がる、食事やお気に入りの場所は今まで通りにするなど、先住犬の安心感を守ることが結果的にスムーズな多頭飼いへの近道です。
おすすめの犬種組み合わせ


同じ犬種同士
トイプードル同士やチワワ同士など、同じ犬種で揃えると性格や運動量が似ているため、管理がしやすくなります。同じ犬種の組み合わせは、ケアや訓練が統一しやすいという利点があります。
サイズが近い犬同士
大型犬同士や小型犬同士など、体格が似ている犬を選ぶと、遊びや散歩のペースが合いやすいです。体格が似ている犬同士は、トラブルが少なくなります。
異なる性別の犬同士
オスとメスの組み合わせは、争いが少なく、お互いに良い影響を与えます。未去勢の場合は繁殖に注意し、適切な時期に去勢手術を行いましょう。異性の組み合わせは、相性が良い場合が多いです。
年齢を考慮
先住犬が成犬の場合、新しい犬は年齢が近い方が適応しやすいです。シニア犬には新しい環境が負担になることもあるため、慎重に検討しましょう。年齢差が大きい場合は、適切なケアが必要です。
多頭飼育崩壊を防ぐために考えておきたいこと
「多頭飼育崩壊」とは、犬や猫が増えすぎて世話や掃除が行き届かなくなり、飼い主の生活環境や動物の状態、周囲の環境が悪くなってしまう状況のことです。相模原市の案内では、これは「誰にでも起こりうる問題」と説明されています。また環境省は、令和2年度に「人、動物、地域に向き合う多頭飼育対策ガイドライン」を策定し、動物愛護管理と社会福祉が連携して対応する考え方を示しています。
飼い主さんが悪いと決めつけるのではなく、病気、高齢、経済的な事情、孤立などが重なって起こることがある、という見方です。だからこそ、迎える前と迎えたあとに次のことを考えておくことが予防になります。
- 飼える数を見極める:散歩、清掃、フード代、ワクチン代、治療費、近所への配慮まで考え、無理なく世話ができる数にとどめる(相模原市)
- 繁殖に備える:避妊・去勢手術について、早い段階でかかりつけの獣医師に相談する(相模原市は、最初の1頭から手術をしておくと、頭数が増えてからより費用がかからないと説明しています)
- 自分に何かあったときの備え:病気や入院、転居のとき、頭数分のお世話を頼める人がいるかを考えておく。環境省のモデル事業では、シニア世代の飼い主向けに、元気なうちから「ペットの終活」を考える取り組みも紹介されています
- 犬の寿命の長さを見通す:犬の寿命は15年前後といわれるため、2頭の最期まで責任をもてるかを、迎える前に家族で話し合う(ペトコト)
- 困ったら早めに相談する:世話が回らなくなってきたと感じたら、一人で抱え込まず、お住まいの自治体の動物愛護の担当窓口や、かかりつけの動物病院に相談しましょう
多頭飼いは、犬も飼い主さんも幸せになれる暮らし方のひとつですが、無理のない頭数と体制があって成り立ちます。「飼いたい気持ち」と「世話をしきれる現実」の両方を、迎える前に確認してみてください。
まとめ


多頭飼いは喜びも多いですが、それに伴う責任も大きくなります。十分な準備と計画を持ち、犬たちにとって快適な環境を提供することが重要です。多頭飼いの魅力を最大限に引き出し、楽しいペットライフを送りましょう。多頭飼いを成功させるためには、犬たちの個々のニーズに応じたケアと愛情を忘れずに提供することが大切です。
よくある質問
Q. 対面させたら唸ったり吠えたりしました。相性が悪いということですか?
A. 初対面での多少の警戒や唸りはよくあることで、すぐに相性が悪いと判断する必要はありません。無理に距離を詰めず、時間をかけて少しずつ慣らしていく中で落ち着いてくることも多いです。ただし、本気で噛みつこうとするなど激しい攻撃性が続く場合は、無理に一緒にさせず専門家に相談しましょう。
Q. 何匹まで一緒に飼うのが現実的ですか?
A. 明確な上限はありませんが、住環境の広さ、世話にかけられる時間、経済的な余裕によって現実的な頭数は変わります。1匹1匹に十分なケアと愛情を注げる範囲にとどめることが、犬たちにとっても飼い主にとっても大切です。
Q. 先住犬が新入り犬にごはんを譲ってしまいます。心配ないですか?
A. 性格による部分もありますが、ストレスで食欲が落ちている可能性もあるため、体重や元気の様子は注意して観察しましょう。食事は個別のスペースで与える、先住犬を優先するなど、それぞれが安心して食べられる工夫をすることをおすすめします。
Q. 2頭目を迎えるのは、先住犬が何歳くらいがよいですか?
A. ペトコトの解説では、先住犬が3〜8歳くらいが目安とされています。年齢が近すぎるとシニア期の介護が重なりやすく、離れすぎると若い犬の元気さが先住犬の負担になりやすいためです。AKCも、先住犬が高齢の場合は子犬の遊びに体力的に付き合えないことがあると述べています。先住犬の健康状態や性格によって適した時期は変わるので、かかりつけの獣医師にも相談してみてください。
Q. 多頭飼いの費用は、1頭のときの2倍になりますか?
A. ペットフード協会の令和7年調査では、犬の月の支出総額の平均が1頭飼育で16,030円、複数頭飼育で27,715円と、約1.7倍でした。ただし複数頭の家庭は頭数がまちまちの集計と考えられ、2頭ならこの倍率になるとは限りません。フードや医療費は頭数分かかるため、予算は「ほぼ倍」を目安に、余裕をもって見積もると安心です。
専門家に確認しました
身内のドッグトレーナーに確認したところ、「多頭飼いの相談で一番多いのは、新しい犬を迎えた直後に先住犬をかまう時間が減ってしまい、先住犬が不安定になるケース」とのことでした。新入り犬に気を取られすぎず、先住犬との時間もこれまで通り大切にすることがポイントだと聞いています。
この記事の執筆者
ルーク隊長(犬のまとめ 運営者)
子どもの頃から20年以上、犬との暮らしを続けている犬好き。身内にペットトリマー・ドッグトレーナーがおり、日常的に多くの犬と接する環境にある。


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