新入り犬を迎えたら、先住犬が低い声で唸るようになった。思わず「ダメ!」と叱りそうになるけれど、それでいいのか、このままケンカにならないか、不安になりますよね。
結論からいうと、先住犬の唸りは「それ以上は嫌だ」という警告であり、すぐに悪いことと決めつける必要はありません。大切なのは、唸りを力で止めることではなく、唸らなければならない状況を減らすことです。この記事では、唸りの意味、その場での対応、環境の整え方、専門家に相談する目安をまとめます。
先住犬が唸るのは「嫌だ」を伝える手段
犬は言葉が使えないので、不快なときは体の向きを変える、目をそらす、唇をなめるといった小さなサインから始め、それが伝わらないと唸りや歯をむく行動へと段階的に強めていきます。唸りは、その途中にある「警告」の段階です。
唸りは不快感を伝える手段なので、叱って止めるのは避けたほうがよいとされています。叱って唸りだけを止めてしまうと、「警告の段階を飛ばして、いきなり噛む」という流れにつながるおそれがある、というのが一般的な考え方です。
動物行動を専門とする獣医師のウェイラニ・スン氏(サンフランシスコSPCA)は、アメリカの心理学系メディア「Psychology Today」のコラムで、2頭目を迎えた家庭で起こりうる状況のひとつとして、「年長の犬が若い犬に疲れてしまう」ことを挙げています。先住犬は、休みたいのに新入り犬が絡んでくる状況で、唸って境界線を示している場合もあります。ヴェットストリートの記事でも、先住の老犬が子犬に対して境界線を示そうと気難しくなることがあり、一方で子犬はその合図を読み取れずに無視してしまうことがある、と説明されています。
先住犬が唸りやすい4つの場面
唸りには必ず「きっかけ」があります。まず、どんな場面で唸っているのかを書き出してみましょう。
1. 新入り犬が自分のスペースに近づいたとき
寝床やクレート、お気に入りのソファなど、先住犬が休む場所に新入り犬が入ってきたときに出やすい唸りです。縄張りというより「ここでは休ませて」という気持ちが強い場合もあります。
2. ごはん・おやつ・おもちゃの周り
食べ物やおもちゃを守ろうとする行動は、資源防衛と呼ばれます。AKC(アメリカン・ケネル・クラブ)の記事では、体をこわばらせる、じっと見つめる、白目を見せる、唇をめくる、低く唸るといった様子が、見られるサインとして紹介されています。多頭飼いでは特に起きやすい場面なので、詳しくは別の記事でも取り上げます。
3. 子犬のしつこい絡み
子犬は先住犬の嫌がるサインを読み取れず、耳や尻尾に噛みついたり、ずっとついて回ったりします。先住犬が一度唸って「やりすぎ」を伝えるのは、犬同士ではよくあるやりとりです。ただし、先住犬が逃げる場所がなく、何度も唸らざるを得ない状況は避けたいところです。
4. 興奮が高まった遊びの途中
楽しく遊んでいたのに、急に興奮が高まって唸りが混ざることがあります。じゃれ合いの範囲か、本気のケンカか迷うときは、犬の多頭飼いで喧嘩が起きる原因と対処法の見分け方も参考にしてください。
唸った瞬間の対応と、引き離す目安
唸りが出たその場では、次の順番で対応します。
- 飼い主が落ち着く:大声を出したり慌てて引き離したりすると、さらに興奮を高めます。静かな声で呼びかけましょう。
- 2頭の注意を別のことに向ける:それぞれの名前を呼んで「おすわり」などの指示を出し、できたらおやつを与えて気をそらす方法が、Petscareの解説で紹介されています。
- 距離をあける:新入り犬をサークルやゲートの向こうに移動させ、先住犬が安心できる状態にします。
- 時間を短く、距離を広くして再開:同じ場面を再開するときは、前回より短い時間、前回より広い距離から始めます。
先住犬を叱らないことも大切です。ロイヤルカナンの解説では、期待どおりの反応が得られなくても先住犬を叱らず、先住犬の縄張りや生活スペースを尊重するようすすめています。唸ったことを叱られると、「新入り犬が近づくと嫌なことが起こる」と先住犬が学んでしまうおそれがあります。唸り全般の考え方は、犬が唸る理由と正しいやめさせ方も参考になります。
様子見でよい唸りと、すぐ引き離したいサインの目安
| 様子を見ながら調整 | すぐ引き離して専門家へ相談を検討 | |
|---|---|---|
| 唸りの長さ | 短く一度だけ、新入り犬が離れると止まる | 何度も繰り返す、近づくたびに出る |
| 体の様子 | 唸ったあと体がゆるむ | 体が固まり、毛が逆立ち、じっと見つめ続ける |
| 口元 | 唸るだけで終わる | 歯をむく、唇をめくる、噛もうとする |
| 新入り犬の反応 | 距離を取る、体を低くする | しつこく追い続ける、興奮して離れない |
表はあくまで目安で、犬の組み合わせや状況によって判断は変わります。エランコ社の飼い主向けサイトでは、背中や首の毛が逆立つ、長く見つめる、唸る、歯を見せる、背中を丸めるといった様子が先住犬に見られたら、犬同士を離すようすすめています。右側に当てはまる様子があるときは、「そのうち慣れる」と待つより、まず安全を優先してください。
唸りを減らすための環境づくり
- 先住犬の専用スペース:新入り犬が入れない寝床や部屋を用意する。ゲートの高さは、新入り犬の体格に合ったものを選ぶ。
- 食事は別々の場所で:AKCの記事では、犬同士が食事中に近づかないようにし、器も共有しない、残したごはんを他の犬に食べさせず片付ける、といった方法が紹介されています。
- おもちゃやチューイングは「同時に出さない」:見張っていないときは片付けておく。
- 個別の時間:1頭ずつ飼い主と過ごす時間を毎日つくる。
- 運動を足りなくさせない:エネルギーが余っていると、落ち着かなさがトラブルにつながることがあります。
食事中の接し方は、なぜ「食事中の犬を構う」はNG?もあわせてどうぞ。
相談を考えたいとき
次のような場合は、早めに動物病院やトレーナーに相談してください。
- 唸りだけでなく、噛みつきやケンカが起きている、またはその一歩手前になっている
- 唸りが急に増えた、以前はなかった場面で唸るようになった
- 食欲が落ちる、元気がない、触られるのを嫌がるなど、体調の変化が重なっている
AKCの記事では、大人になってから急に資源を守る行動が始まった場合は、背景に体調の問題があるかもしれないため、まず獣医師に相談するよう述べています。痛みがあるときも、犬は他の犬に近づかれることを嫌がる場合があります。そのうえで、ごほうびを使う方法でしつけを行う、行動の相談ができるトレーナーや獣医師を探すと安心です。
よくある質問
Q. 唸るたびに先住犬を別の部屋へ移してもよいですか?
先住犬だけを繰り返し隔離すると、「新入りが来ると自分が追い出される」と感じやすくなります。基本は新入り犬のほうをサークルなどに移し、先住犬が自分の場所で落ち着けるようにします。
Q. 唸るのを我慢させる「しつけ」は必要ですか?
唸りそのものを止めさせるより、唸る原因を取り除くほうが優先です。唸りを叱って抑えると、予告なしに噛む可能性が高まるといわれています。先住犬の「合図」を残しておくことで、飼い主が先に気づいて介入できます。
Q. 新入り犬にも「やってはいけないこと」を教えるべきですか?
はい。先住犬の寝床に入らない、ごはんの器に近づかない、嫌がっているのにしつこく追いかけない、といった約束事は、新入り犬にも少しずつ教えていきます。子犬の場合は、叱るより、別のおもちゃに誘って落ち着かせる、疲れていそうなら休ませるといった形で伝えていきましょう。
まとめ
- 先住犬の唸りは「嫌だ」を伝える警告で、叱って止めるとかえって危険になることがある
- 唸りが出る場面(スペース、ごはん・おもちゃ、子犬の絡み、興奮した遊び)を整理して原因を減らす
- その場では気をそらして距離をあけ、時間を短く距離を広くしてやり直す
- 毛が逆立つ、歯をむく、噛もうとするなどの様子があれば、すぐ引き離して相談を検討する
- 唸りが急に増えたときは、体調不良が隠れていないか動物病院でも確認する
この記事は一般的な情報をまとめたもので、個々の犬の診断や治療に代わるものではありません。心配なときは、かかりつけの動物病院や専門家に相談してください。
この記事の執筆者
ルーク隊長(犬のまとめ 運営者)
子どもの頃から20年以上、犬との暮らしを続けている犬好き。身内にペットトリマー・ドッグトレーナーがおり、日常的に多くの犬と接する環境にある。

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