犬が咳をしたとき、まず見てほしいのは「咳そのもの」より呼吸が苦しそうかどうかです。咳が1〜2回で止まり、元気も食欲もふだんどおりなら様子を見ることもありますが、呼吸が苦しそう・舌や歯ぐきの色が悪い・咳が何日も続く・子犬や高齢犬で咳が出る、といった場合は、動物病院で調べてもらうサインです。



忙しいときは、目次と「まとめ」だけ読んでもだいじょうぶだよ。
- まず呼吸の苦しさと舌・歯ぐきの色を確認する
- 咳のタイプやタイミングをメモし、動画に撮る
- 呼吸が苦しそう・舌が青紫・ぐったりは夜間でも受診
犬の咳の原因は、のどや気管の刺激から、感染症、気管の病気、心臓の病気までさまざまで、見た目の咳だけで原因を決めることはできません。
ここでは、診断名を当てることではなく、「咳のタイプや状況の見分け方」「家で観察できること」「動物病院に伝えるとよいこと」を中心に整理します。運営者は獣医師ではなく、犬好きの個人です。
この記事は一般的な情報であり、診断や治療の代わりにはなりません。
犬の咳はまず「呼吸の様子」から見る
要点|呼吸、舌の色、元気と食欲、咳の続いた期間の4点を確認
咳が出たとき、飼い主さんが最初に確認したいのは次の4点です。
- 呼吸が苦しそうか:胸やお腹が大きく波打つ、口を開けて息をしている、首を伸ばして息をしている
- 舌や歯ぐきの色:ふだんのピンク色から、青紫っぽい・白っぽい色になっていないか
- 元気と食欲:遊ぶ、食べる、散歩に行きたがるなど、いつもどおりか
- 咳の回数と続いている期間:今日だけか、数日〜数週間続いているか
MSDマニュアル(ペットの飼い主向け)は、犬の呼吸器の病気の症状として、乾いた咳や粘液・血液を伴う咳、呼吸が速い、呼吸が苦しい、浅い呼吸、呼吸のときの音などを挙げています。
また、心不全のように呼吸器以外の病気でも咳や呼吸困難が起こりうるとも説明しています。つまり、咳があるから呼吸器の病気とは限らないということです。
犬の「ふだんと違う」を一覧で探したいときは、犬の症状から探す|気になる「いつもと違う」の一覧も役立ちます。
咳のタイプ別の見方|乾いた咳・湿った咳・ガーガー・カハッ
要点|音の印象は手がかりになるが、咳の音だけで原因は決められない
咳の音の特徴は、動物病院で状況を伝えるときの大事な手がかりになります。次の表は、飼い主さんが整理しやすいように「音の印象」と「その音で考えられること」をまとめたものです。あくまで一般的な見方で、これで原因が決まるわけではありません。
| 咳のタイプ | 音の印象 | 考えられることの例(あくまで可能性) |
|---|---|---|
| 乾いた咳(コンコン・ケホケホ) | 痰が絡まない、乾いた感じ | のどや気管の刺激、ケンネルコフなどの感染症、気管の病気など |
| 湿った咳(ゴホゴホ・ゴロゴロ) | 痰や水分が絡んだ感じ | 下の呼吸器のトラブル、心臓の病気に伴う肺の変化など。気になる場合は早めに受診 |
| ガーガー・ガチョウのような音 | 乾いた、大きな、鳴き声のような咳 | 小型犬で多い気管の病気(気管虚脱)で見られることがある |
| カハッ・ゲホッとえずくような咳 | 咳の後に吐きそうなしぐさ | ケンネルコフ、のどの刺激、食べ物や水でのむせなど |
| ブヒブヒと息を吸い込む発作 | 鼻から吸い込むような音 | 咳ではなく「逆くしゃみ」のことがある |
MSDマニュアルによると、ケンネルコフ(感染性気管気管支炎)は、乾いた激しい咳の発作が主な症状で、咳の後にえずきが続くこともあります。
咳の強さは最初の約5日間で和らぐことが多く、病気自体は10〜20日ほど続くとされています。感染力が強く、動物病院やペットホテルのように、犬が密集する環境で広がりやすいとも説明されています。
また、気管虚脱については、トイ種やミニチュア種など小型の犬に最も多く、乾いた「ガーガー」あるいは鳴き声のような咳が慢性的に続き、呼吸が苦しそうになることがある、と説明されています。
肥満や興奮・ストレスが悪化の要因になるとされるので、体重管理の面でも気を配りたいところです。体型の見直しは、犬が太る原因は食べ過ぎだけ?体型チェックと減量の進め方を解説が参考になります。
咳と「逆くしゃみ」の違い
鼻から「ブヒッ」と息を吸い込むような発作は、咳ではなく逆くしゃみのことがあります。違いや見分け方は犬のくしゃみが止まらない原因とは?逆くしゃみとの違いと動物病院に行くべき目安で詳しく説明しています。判断に迷うときは、次の章で説明する動画の記録が役立ちます。
🏃 起きるタイミング別|夜・興奮したとき・散歩中・食後
要点|いつ出るかを記録すると、診察で状況が伝わりやすい
咳が「いつ」出るかも、状況を整理する大切な情報です。どのタイミングで目立つかをメモしておくと、診察で伝えやすくなります。
夜・寝ているとき・横になったとき
夜や安静時に咳が増える場合は、心臓の病気の影響が気になることがあります。
MSDマニュアルは、左側の心不全では肺に水がたまって、咳、呼吸困難、運動をしたがらない(運動不耐性)が最も多い症状で、失神することもあると説明しています。ただし、咳が心臓の病気とは限りません。
慢性の気管支炎など呼吸器の病気でも咳は続きます。夜に咳が増える・安静にしていても呼吸が速いと感じる場合は、早めに動物病院で調べてもらいましょう。
興奮したとき・リードを引っぱったとき
散歩のはじめに興奮して咳が出る、首輪が引っぱられると咳が出るという場合は、気管への刺激が関係していることがあります。
首輪ではなくハーネスに変える、興奮しすぎる場面をつくらないなど、気管への負担を減らす工夫が役立つことがあります。ただし、これは「刺激を減らす」工夫であり、原因を調べる代わりにはなりません。続く場合は受診してください。
散歩中・運動したあと
運動の後に咳が出る、すぐ疲れて座り込む、散歩を嫌がるようになった、といった変化は、心臓や呼吸器の負担のサインのことがあります。MSDマニュアルが挙げる心不全の症状にも「運動不耐性」があります。「年のせい」と決めつけず、変化として動物病院に伝えましょう。
食べたり飲んだりした直後
水や食べ物でむせる程度の咳なら一時的なことが多いですが、食後に毎回咳き込む、吐き戻しのような様子がある場合は、食べ物の通り道(食道)の問題が関係していることもあります。
MSDマニュアルは、咳や呼吸困難が、嘔吐より「吐出(受動的に出てくる逆流)」に伴うことが多いとしています。ごはんの後に毎回咳が出る場合は、その様子も動画に残して相談しましょう。
季節や環境との関係
ほこりやたばこの煙、芳香剤、暖房の乾燥などが咳のきっかけになることはあります。MSDマニュアルでも、寒さ・湿気・ほこり・換気の悪さが群れ単位の呼吸器の病気の発生に関わると説明されています。
家の空気の状態を見直すのは悪いことではありませんが、咳が続くときは環境のせいだと決めつけないようにしましょう。フィラリア予防の時期やワクチンの状況も、咳の相談では聞かれることがあります。
予防の基本は犬のフィラリア予防はいつからいつまで?時期・飲み忘れ・子犬の注意点にまとめています。
🏥 すぐ受診したい目安と、様子を見てもよいケース
要点|呼吸が苦しそう・青紫の舌は夜間でも連絡。咳が3日続けば受診
咳そのものより、咳に何が伴っているかで緊急度が変わります。迷ったときは、受診するほうに倒して考えてください。
すぐ動物病院に連絡したいサイン
- 口を開けて苦しそうに息をする、お腹で大きく息をしている
- 舌や歯ぐきが青紫・白っぽい色になっている
- 咳のあと、ぐったりして動かない、倒れる、失神した
- 横になれず、座ったまま首を伸ばして息をしている
- 咳に血が混じる、泡のような液が出る
- 何かを喉に詰まらせたかもしれない(おもちゃ、骨、食べ物など)
- 咳と一緒に、急な高熱、元気・食欲の著しい低下がある
夜間・休日でも、呼吸が苦しそうな場合は救急対応の動物病院へ連絡してください。呼吸が苦しそうな状態は、様子を見ている間に悪化することがあります。
早めに受診したい目安
- 咳が3日以上続く、または少しずつ増えている
- 子犬・高齢犬、持病のある犬で咳が出る
- 膿のような鼻水や目やにを伴う
- 湿った咳(痰が絡んだ音)に変わってきた
- 散歩を嫌がる、疲れやすいなど、体力が落ちた様子がある
- 最近、ペットホテル・ドッグラン・動物病院など、ほかの犬と接触する場所に行った
MSDマニュアルのケンネルコフの説明では、発熱、膿のような鼻汁、元気消失、食欲低下、湿った咳などが出るときは、ほかの感染症が加わっている可能性があり、特に子犬では注意が必要だとされています。子犬では気管支肺炎に進むことがあるとも書かれています。
様子を見てもよいことが多いケース
- 水を飲んだ時やごはんの途中で、1〜2回むせただけ
- 興奮した直後に数回咳が出て、すぐ収まり、その後はいつもどおり
- 元気・食欲は普通で、咳もまれにしか出ない
この場合でも、「今日は大丈夫」と思ったあとに、咳が何日も続いたり、増えたりすることがあります。日付を決めて、様子の記録をつけておくと判断しやすくなります。
🏥 家で観察できること|動画と呼吸数、動物病院に伝えるメモ
要点|咳の動画と安静時の呼吸数、接触歴や予防歴をまとめて伝える
診察のときに犬が咳をするとは限りません。そこで役立つのが、家での記録です。
1. 咳のようすを動画に撮る
スマートフォンで、咳が出ている場面を10〜30秒ほど撮ります。音がわかるように、静かな場所で、犬の胸やお腹の動きが見えるようにしてください。「カハッ」とえずく、ガーガーと鳴るなど、言葉で伝えにくい様子を動画で見せるだけで、獣医師が状況をつかみやすくなります。
2. 安静時・睡眠中の呼吸数を数える
MSDマニュアルは、心臓病のある犬では、睡眠中や安静時の呼吸数を1分間数えることを勧めています。この数値を定期的に記録しておくと、早期発見や治療への反応の確認に役立つとされています。
ただし、ページには「何回以上なら異常」という具体的な数値は書かれていません。基準値はかかりつけの獣医師に聞いて、自分の犬の普段の数を知っておくと安心です。
数え方は、犬が眠っているときに、胸の上下を1回と数えて1分間続けます。
3. 動物病院に伝えるメモ
受診時に伝えると役立つ項目をまとめます。スマートフォンのメモにまとめておくと便利です。
- 咳が始まった日と、最近の変化(増えた・減った・音が変わった)
- 咳のタイプ(乾いた・湿った・ガーガー・えずく)
- 出るタイミング(夜・朝・散歩中・興奮時・食後)
- 1日の回数のめやす
- 元気、食欲、散歩の様子、体力の変化
- 鼻水、くしゃみ、目やに、発熱、嘔吐、下痢の有無
- ほかの犬との接触(ペットホテル、トリミング、ドッグランなど)
- ワクチン接種歴とフィラリア予防の状況
- 持病、飲んでいる薬やサプリ
- 首輪かハーネスか
ワクチンの種類や時期の整理は、犬のワクチン完全ガイド|混合ワクチンの種類と接種スケジュール、副反応の注意点を参考にしてください。MSDマニュアルのケンネルコフの説明では、ジステンパー、パラインフルエンザ、犬アデノウイルス2型、ボルデテラ菌に対するワクチンがあると書かれており、どれを接種するかは獣医師と相談するようにとされています。
咳止めなどを自己判断で使わない
人用の薬や、以前もらった薬を自己判断で使うのは避けてください。
MSDマニュアルの心不全のページでは、咳止めは心不全の治療では一般に勧められておらず、咳を抑えることで肺にたまった水の問題が悪化するおそれがあると説明されています。
咳の原因によって対応は大きく変わるため、咳を止めること自体を目的にしないことが大切です。
よくある質問
- 犬が「カハッ」と咳をしてすぐ収まりました。病院に行くべき?
-
1〜2回で収まり、元気も食欲もふだんどおりなら、すぐに受診しなくてもよいことが多いです。ただし、繰り返す、回数が増える、数日続くといった場合は受診を考えてください。動画を撮っておくと診察で役立ちます。
- 咳をしたあとに白い泡を吐きました。大丈夫?
-
咳き込んだ後に少量の泡を吐くことはありますが、何度も繰り返す、ぐったりしている、呼吸が苦しそうな場合は早めに動物病院へ連絡してください。吐く様子の見方は、症状ガイドからも探せます。
- 小型犬の「ガーガー」という咳はそのままでいい?
-
小型犬に多い気管の病気で見られることがある咳の音です。続く場合は、様子見をせずに受診して相談してください。首輪をハーネスに変える、体重を管理するなど、日常でできる工夫もあります。
- ペットホテルに預けたあとから咳が出ています。
-
ほかの犬と接触した後の咳は、ケンネルコフなどの感染症の可能性があります。ほかの犬にうつる可能性もあるため、受診の前に電話で「咳があること」と「最近の接触歴」を伝え、指示に従ってください。散歩やドッグランは、診察の結果が出るまで控えましょう。
まとめ
- 犬の咳は、まず呼吸が苦しそうか、舌や歯ぐきの色がおかしくないかを確認する
- 咳のタイプ(乾いた・湿った・ガーガー・えずく)やタイミング(夜・興奮時・食後)をメモして、動画に撮る
- 呼吸が苦しそう、舌が青紫、ぐったり、咳に血が混じるときは、夜間でもすぐ動物病院へ
- 咳が3日以上続く、子犬・高齢犬、湿った咳に変わったときは早めに受診する
- 人用の薬や咳止めを自己判断で使わず、安静時の呼吸数の目安はかかりつけ医に聞いておく
📚 参考にした情報
- MSDマニュアル(ペットの飼い主向け)|Introduction to Lung and Airway Disorders of Dogs
呼吸器の病気の症状(咳・速い呼吸・呼吸困難・呼吸音など)と、心不全など呼吸器以外の病気でも咳が出ること。 - MSDマニュアル(ペットの飼い主向け)|Tracheobronchitis (Bronchitis) in Dogs(ケンネルコフ)
乾いた激しい咳とえずき、約10〜20日続くこと、子犬での注意、感染力、ワクチンで予防できる病原体。 - MSDマニュアル(ペットの飼い主向け)|Tracheal Collapse in Dogs
トイ・ミニチュア種に多く、乾いたガーガー様の慢性の咳と呼吸困難が出ること。肥満や興奮が悪化要因。 - MSDマニュアル(ペットの飼い主向け)|Heart Failure in Dogs
左側心不全で咳・呼吸困難・運動不耐性・失神が出ること、睡眠中や安静時の呼吸数を数えて記録することの勧め、心不全では咳止めは一般に勧められないこと。 - MSDマニュアル(ペットの飼い主向け)|Vomiting in Dogs
咳や呼吸困難は、嘔吐より吐出(受動的な逆流)に伴うことが多いこと。
※上記の公的・専門機関の情報をもとに、当サイトの言葉でまとめています。内容は獣医師の診察・診断の代わりにはなりません。
この記事の執筆者
ルーク隊長(犬のまとめ 運営者)
子どもの頃から20年以上、犬との暮らしを続けている犬好き。身内にペットトリマー・ドッグトレーナーがおり、日常的に多くの犬と接する環境にある。獣医師ではありません。くわしくは編集方針をご覧ください。



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