鶏のささみやむね肉は、犬のごはんのトッピングや手作りごはんの定番食材です。結論からいうと、骨と皮を外し、味付けをせず、中心まで火を通したものなら、犬に食べさせても問題ない食材(◯)です。一方で、生のまま与えるのはおすすめできません。鶏肉は細菌の汚染が起こりやすい食材で、犬にも人にもリスクがあるためです。
この記事では、なぜ加熱が必要なのか、どのくらい火を通せばよいのか、皮や味付けはどうするか、アレルギーのある犬はどうするかを整理します。運営者は獣医師ではありません。公的機関や獣医系団体などの情報をもとにした一般的な内容なので、持病がある犬や食事制限中の犬は、かかりつけの獣医師に確認してください。
犬に鶏ささみ・むね肉をあげる結論早見
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 可否 | 加熱したものは◯、生は× |
| 下ごしらえ | 骨・皮・見えている脂を外し、味付けなしで中心まで加熱する |
| 量の考え方 | おやつ・トッピングとして1日に必要なカロリーの一部にとどめる。主食は総合栄養食が基本 |
| 初めての場合 | ごく少量から始めて、便や皮膚の様子を見る |
| 避けたい例 | から揚げ、焼き鳥のタレ、塩・だし入りの煮物、骨付き肉 |
AKC(アメリカン・ケネル・クラブ)は、味付けをしていない焼いた・ゆでた・蒸した鶏肉は、食事の一部やトッピング、おやつとして使えると紹介しています。ささみやむね肉は皮や脂が少なく、淡泊で、火を通すとほぐしやすい部位なので、もも肉や皮付きの肉より脂質を抑えやすいのが特徴です。ただし、必ず食べさせるべき食材ではなく、鶏肉だけでは栄養バランスも偏ります。毎日のごはんの中心は、必要な栄養がそろうように作られた総合栄養食です。
鶏肉を生で与えてはいけない理由
鶏肉は、生や加熱が不十分な状態だと食中毒のリスクが高い食材です。自治体の食品衛生の情報では、鶏肉には生食用の衛生基準がないため、生や加熱不足で食べると食中毒になる可能性があると説明されています。農林水産省の資料によると、カンピロバクターによる食中毒は細菌性食中毒の中で患者数・発生件数が最も多く、主な原因は生または加熱不十分の鶏肉です。同じ資料では、出荷前の鶏や食鳥処理場に運ばれた鶏の群れの陽性率が3〜5割で推移しているとも報告されています。
犬も例外ではありません。環境省の「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」は、肉や魚を生のまま与えると内部寄生虫が発生したり細菌性の中毒を起こしたりする可能性があるため、加熱調理したものを与えるほうが安全性が高まるとしています。米国FDAも、生の動物性ペットフードからサルモネラやリステリアが検出されたことをふまえ、生食を避けるよう注意喚起しています。
神経の病気との関連を示した研究もある
2018年にメルボルン大学の研究チームが発表した症例対照研究(Journal of Veterinary Internal Medicine)では、急性多発性神経根神経炎(人のギラン・バレー症候群に似た、手足の麻痺が進む病気)が疑われた犬27頭のうち96%が生の鶏肉を食べていました。健康な犬47頭では26%でした。研究チームは、生の鶏肉を食べることが危険因子であり、カンピロバクター感染が関わっている可能性があるとしています。対象は多くなく、すべての犬が病気になる話ではありませんが、あえて生で与える理由は見当たりません。
家族への感染にも注意
生の鶏肉を食べた犬は、元気に見えても菌を持っていることがあり、だ液や便を通じて家庭内に広がる可能性があります。小さな子ども、高齢の方、妊娠中の方、体調を崩している方がいる家庭では、とくに慎重に判断してください。
加熱のしかたと与え方のコツ
加熱の目安は、人向けの食品衛生の情報で示されている「中心部が75℃で1分以上」が参考になります。表面の色が変わっても中が生のことがあるので、厚みのあるむね肉は切って断面が白くなっているか確認しましょう。
- 下ごしらえ:皮、骨、見えている脂を取り除きます。ささみ中央の白い筋は加熱すると硬くなるため、除くか細かく切ると食べやすくなります。
- 加熱:塩や調味料を入れず、ゆでる・蒸す・油を使わずに焼くなどで中心まで火を通します。
- 冷まして切る:人肌程度まで冷まし、愛犬の口の大きさに合わせてほぐすか小さく切ります。
- 保存:残りは小分けにして冷蔵・冷凍し、食べ残しは長く置かずに片づけます。
量はグラム数では決められません。環境省のガイドラインは、おやつなどの間食を欲しがるまま与えると栄養の偏りや肥満につながるとして、1日に必要なカロリーの20%以内に抑えることが大切としています。トッピングした日は、その分ごはんを減らす考え方が基本です。初めての日は他の新しい食材と重ねないようにしましょう。生の鶏肉に触れたまな板・包丁は、洗ってから他の食材に使い、犬に触れる前に手も洗っておくと安心です。
皮・味付け・加工品はどうする?
- 鶏皮:脂が多いため、体重が気になる犬や、脂っこいものでお腹をこわしやすい犬には向きません。外しておくのが無難です。
- 焼き鳥・から揚げ・フライドチキン:タレ、塩、衣、揚げ油は犬には不要で、玉ねぎやにんにくが使われていることもあります。人の料理の取り分けは避けましょう。
- 骨付き肉:鶏の骨は危険です。理由は犬に鶏の骨を与えてはいけない理由で解説しています。
- ささみジャーキー・缶詰:犬用の商品は環境省のガイドラインでいう「間食」などにあたります。給与量やカロリーの確認、原材料の見方はドッグフードの原材料表示の読み方が参考になります。
鶏肉を控えたほうがよい犬・相談したいケース
鶏肉アレルギーの可能性がある犬は、与えないのが基本です。AKCも、鶏肉は犬のアレルゲンになりやすい食材のひとつとしています。Mueller博士らが2016年にBMC Veterinary Researchで発表した、犬の食物アレルギー報告297頭をまとめた総説では、原因として報告された食材は牛肉34%、乳製品17%、鶏肉15%、小麦13%の順でした。食後にかゆがる、耳や皮膚が赤くなる、軟便や嘔吐が続くといった様子があれば、与えるのをやめて動物病院に相談してください。調べ方は犬の食物アレルギー検査方法にまとめています。
次のような犬も、鶏肉を新しく加える前に獣医師へ相談すると安心です。
- 子犬(消化が未熟で、栄養バランスも崩れやすい時期です)
- 腎臓・心臓・肝臓などの持病があり、たんぱく質や塩分の管理をしているシニア犬
- 肥満気味の犬、脂っこいものでお腹をこわしたことがある犬
- 療法食を食べている犬(トッピングで食事療法の意味が薄れることがあります)
生の鶏肉を食べてしまったとき
生の鶏肉を落として食べてしまった場合は、量と時間を確認し、数日は様子を見ます。少量でふだんどおりなら慌てすぎる必要はありませんが、嘔吐、下痢(粘液や血が混じる)、食欲の低下、ぐったりして元気がない、足元がふらつくといった様子があれば、食べた内容と時間を伝えて動物病院に連絡してください。家庭で吐かせたり薬を与えたりせず、獣医師の指示を受けましょう。
よくある質問
Q. ささみのゆで汁は飲ませてもいいですか?
塩や調味料を入れずにゆでた汁なら、ごはんの風味づけに使えます。ただし浮いた脂が多いので、脂を控えたい犬には量を絞るか、冷やして固まった脂を取り除いてください。傷みやすいので、その日のうちに使い切りましょう。
Q. 毎日あげても大丈夫ですか?
少量のトッピングなら問題になるとは限りませんが、足した分だけカロリーが増え、栄養バランスも崩れます。食べさせた分ごはんを減らし、体重の推移を見ながら調整してください。
Q. 鶏肉の加工品は大丈夫?ほかの食べ物は?
人用のハムやソーセージ、味付け肉は塩分や添加物が心配です。ほかの食べ物の可否は犬が食べていいもの・ダメなもの早見表で確認できます。
まとめ
- 鶏ささみ・むね肉は、骨・皮を外して味付けなしで中心まで加熱すれば◯。生は避ける
- 加熱の目安は、人向けの食品衛生で示される「中心75℃で1分以上」が参考になる
- 生の鶏肉は細菌のリスクがあり、研究では神経の病気との関連も報告されている
- おやつ・トッピングは1日に必要なカロリーの20%以内(環境省)が目安。主食は総合栄養食
- 鶏肉アレルギーの疑い、子犬・シニア犬、持病や食事制限がある犬は獣医師に相談してから
- 生で食べて下痢や嘔吐、元気がないなどの様子があれば動物病院へ連絡する
生の肉を使った食事について知りたい方は、犬の生食(BARF)とは?もご覧ください。
この記事の執筆者
ルーク隊長(犬のまとめ 運営者)
子どもの頃から20年以上、犬との暮らしを続けている犬好き。身内にペットトリマー・ドッグトレーナーがおり、日常的に多くの犬と接する環境にある。

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