愛犬の奥歯に茶色や黄色のかたまりがついているのを見つけて、「これって歯石?」「自分で取れるの?」と不安になった飼い主さんは多いのではないでしょうか。結論からいうと、犬の歯石は歯垢(しこう)が固まったもので、一度ついてしまうと家庭ではほぼ取れません。だからこそ、歯石になる前の「歯垢」の段階で落とすことが予防の中心になります。
この記事では、歯石ができる仕組みと犬につきやすい理由、放っておくとどうなるか、家庭でできる予防と受診の目安を整理します。運営者は獣医師ではありません。診断や治療の判断はできないため、獣医師監修の解説や公的・専門団体の情報をもとにした一般的な内容としてお読みください。
歯石とは何か、なぜ犬につきやすいのか
歯垢が固まったものが歯石
食べかすや細菌が歯の表面に付着したものが歯垢です。この歯垢に唾液中のミネラルが加わって石灰化し、硬くなったものが歯石です。価格.comのペット保険ページ(獣医師監修)では、歯石は歯の表面に付いた歯垢が固まったものと説明されています。
歯垢が歯石に変わるまでの期間については、情報源によって表現が異なります。オリコンMEのペット保険ガイドでは約3日で石灰化するとされ、2010年にマース ジャパンが行った啓発キャンペーンでは3〜5日程度と紹介されていました。米国のコーネル大学獣医学部の解説では、早ければ24時間ほどで固まり始めるとされています。いずれにしても「数日のうちに固まってしまう」と考えておくと、毎日のケアの意味が理解しやすくなります。
犬は歯石がつきやすい条件がそろっている
- 唾液の性質:犬の唾液は人に比べて弱アルカリ性に近く、そのため人より早く歯垢が歯石になりやすいと説明されています(価格.comペット保険の解説)。
- ケアが十分でない:最大の要因は、歯磨きなど日々の口腔ケアが足りないことだとされています(東京ドクターズの獣医師解説)。
- 歯並び・体格:小型犬や短頭種は歯が密集しやすく、歯垢がたまりやすいとされています(オリコンME)。
- 年齢:年齢を重ねるほど歯周病のリスクは高まるといわれます。
歯石を放っておくとどうなる?
歯石そのものは、歯の表面にくっついたミネラルのかたまりです。問題は、その表面がざらざらしていて、さらに歯垢がつきやすくなることです。歯石の上に歯垢が重なり、さらに歯石が増えるという悪循環に陥ります。
歯垢や歯石の中の細菌が歯茎に炎症を起こした状態が歯肉炎で、進むと歯を支える骨にまで影響する歯周病(歯周炎)になります。東京ドクターズの解説では、歯周病が進行すると口臭や出血、歯のぐらつきや脱落、食事中の痛みなどが現れ、歯周ポケットから細菌が体内に入って腎臓や肝臓などに影響する可能性も指摘されています。
3歳以上の犬の約8割が歯周病にかかっているとされる、という説明は、価格.comのペット保険ページや東京ドクターズの記事に見られます。調査条件の詳細までは確認できませんが、「多くの犬が歯のトラブルを抱えやすい」という意味で受け止めておくとよいでしょう。
家庭で歯石は取れる?
結論としては、固まった歯石は、歯ブラシではほとんど落とせません。オリコンMEの解説でも、歯石は歯ブラシでは取れないとされています。市販の歯石取り用の器具やスケーラーを家庭で使うのは、歯茎や歯の表面を傷つけるおそれがあるうえ、犬が暴れた場合のケガのリスクも考えられます。
動物病院での歯石除去は、全身麻酔下で行うのが一般的です。AVDC(米国獣医歯科学会)は、麻酔をかけない歯石取りは見た目を白くするだけで、歯周病が起こる歯茎の下の細菌には届かず、飼い主に「口の中は大丈夫」という誤った安心感を与えるおそれがある、という立場を示しています。東京ドクターズの記事に登場する獣医師の多くも、無麻酔での歯石除去は痛みやストレスで以後の歯磨きを嫌がるようになる、といった理由で勧めていません。処置を受けるかどうか、どんな検査をするかは、犬の年齢や持病によっても変わるため、かかりつけの獣医師とよく相談して決めることになります。
歯石をつけないための毎日のケア
基本は歯磨き
米国の獣医口腔衛生評議会(VOHC)は、毎日の歯磨きを口腔ケアの基本としています。オリコンMEの解説では、最低でも3日に1回以上の歯磨きが推奨されています。毎日が難しい場合でも、「どんな形でも続けて磨くほうが、まったく磨かないよりはよい」という考え方が紹介されています。
嫌がって磨けない場合は、犬が歯磨きを嫌がるときの慣らし方の記事を、これから始める場合は歯磨きはいつから始めるかの記事を参考にしてください。
補助的なケア
デンタルガムや噛むおもちゃ、歯垢がつきにくいとされるフード、水に混ぜるタイプのケア用品などは、歯磨きを補うものです。VOHCは、歯垢や歯石の抑制効果が確認された製品に認定マーク(Seal of Acceptance)を付与していますが、あくまで「補助」であり、歯磨きの代わりにはならないというのが基本的な考え方です。硬すぎるものは歯の破折につながるおそれもあるため、選ぶときは注意が必要です。
定期的な口のチェック
オリコンMEの解説では、年に1回程度、動物病院で口の中をチェックしてもらうことが勧められています。ワクチンや健康診断のついでに、口の中も見てもらうと習慣化しやすいでしょう。病院選びはかかりつけの動物病院の選び方の記事も参考になります。
自宅でのチェックと受診の目安
| 見られる様子 | 考えられること | 目安 |
|---|---|---|
| 歯の付け根に黄色〜茶色のかたまりがある | 歯石がついている可能性 | 早めに病院で口の中を診てもらう |
| 歯茎が赤い・腫れている・触ると出血する | 歯肉炎などの炎症の可能性 | 数日続くなら受診を検討 |
| 口臭が強くなった | 歯周病や口の中のトラブル、体の病気の可能性 | 続く場合は受診を検討 |
| 硬いフードを避ける、顔を前足でこする、よだれが増えた | 口の中の痛みの可能性 | なるべく早く受診 |
| 歯がぐらつく、鼻水やくしゃみが続く | 歯周病が進行している可能性 | 早めに受診 |
表はあくまで目安で、原因の特定は獣医師の診察でなければできません。「歯石が少しだけだから」と様子を見ているうちに進んでしまうことも多いため、気になった時点で相談するのが安心です。
よくある質問
Q. 歯石が少しついているだけでも病院に行くべきですか?
少量でも、歯茎の赤みや口臭を伴うなら相談の価値があります。症状がなくても、年1回程度の口のチェックの際に、歯石の量や今後のケアについて聞いておくと安心です。
Q. 歯石除去をしたら、もうつかなくなりますか?
処置のあとも、何もしなければ再び歯垢がたまり、歯石がついていきます。処置の効果を保つには、家庭での毎日のケアが前提になります。
Q. フードを変えるだけで歯石は防げますか?
歯垢がつきにくいとうたうフードもありますが、それだけで十分とはいえません。フード選びの前に、歯磨きを習慣にできるかを考えるほうが、結果につながりやすいと考えられます。
まとめ
- 歯石は歯垢が固まったもので、数日のうちにできはじめ、家庭では取れない。
- 犬の唾液の性質や歯並び、ケア不足などが重なり、歯石がつきやすい。
- 予防の中心は、歯垢の段階で落とす歯磨き。ガムなどは補助として使う。
- 歯茎の赤み、出血、強い口臭、食べにくそうな様子があれば、動物病院へ相談する。
歯石は「ついてから対処する」より「ついたかなと思う前に歯垢を落とす」ほうが、犬にも飼い主にも負担が小さくなります。まずは口の中を見る習慣から、今日始めてみてください。
この記事の執筆者
ルーク隊長(犬のまとめ 運営者)
子どもの頃から20年以上、犬との暮らしを続けている犬好き。身内にペットトリマー・ドッグトレーナーがおり、日常的に多くの犬と接する環境にある。

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