犬は白黒の世界にいるわけではなく、青と黄色を中心に見分ける「二色型色覚」で世界を見ているとされています。赤と緑は、人ほどはっきり区別できません。視力は人でいう0.2〜0.3程度で、遠くはぼんやり見えますが、視野は約250〜270度と広く、動くものや暗い場所には人より強いと考えられています。足りない分は、嗅覚と聴覚で補っています。この記事では、愛犬の「見え方」を人と比べながら、おもちゃの選び方や、見えにくさのサインまで整理します。



忙しいときは、目次と「まとめ」だけ読んでもだいじょうぶだよ。


クレジット
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Images:
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・犬に見える色・見えない色(早見表つき)
・視力・視野・暗所・動体視力を人と比べた違い
・犬の目に映る世界のイメージと、嗅覚・聴覚との関係
・見えやすいおもちゃの色と、視力低下のサイン・相談の目安
犬の見え方を人間と比べると|早見表
数値は資料や犬種、個体差によって幅があります。あくまで目安として見てください。
| 項目 | 人 | 犬(目安) |
|---|---|---|
| 色の感じ方 | 3種類の錐体(三色型) | 2種類の錐体(二色型)。青と黄色が得意 |
| 視力 | 基準 | 人でいう0.2〜0.3程度(20/50〜20/75ほど) |
| 視野(見渡せる範囲) | 約180〜200度 | 240度前後(資料により250〜270度とも) |
| 両目で重なって見える範囲 | 約140度 | 30〜60度ほど(鼻の短い犬種はやや広め) |
| 暗い場所での見え方 | 基準 | 人より有利(桿体が多く、タペタムという反射層がある) |
| 動きを見つける力 | 基準 | 遠くの動きも、人より素早く正確に捉えるとされる |
犬の目に映る世界を言葉で再現すると
ここまでの内容をまとめて、愛犬の目に映っていると考えられる世界を想像してみましょう。
- 全体にややぼんやりしていて、遠くの細かい部分は見えにくい
- 色は青と黄色が中心で、赤や緑は灰色がかった茶色〜黄色っぽく見える
- 左右や後ろまで広く見渡せるが、目の前の奥行きをつかむのはやや苦手
- 止まっているものより、動いているものがくっきり目立つ
- 暗くなっても、人より周囲の様子をつかみやすい
犬の色の見え方は?見える色・見えない色と二色型色覚のしくみ


目の奥の網膜には、暗い場所や動きに強い「桿体(かんたい)」と、色の識別を担う「錐体(すいたい)」という細胞があります。人は赤・緑・青に対応する3種類の錐体を持つ「三色型」ですが、犬の錐体は2種類しかありません。
Scientific American誌によると、1989年にニッツらが行った犬の色覚の研究で、犬は青と黄色を区別できる一方、赤と緑の区別は難しいことが示されました。
「犬は白黒の世界」というイメージは、それ以前の古い説の名残です。獣医眼科医のクック博士による総説では、犬の錐体は、紫〜青寄りの光と黄緑寄りの光に感度のピークがあると整理されています。
見える色・見えにくい色の対応表
PetMDやAKCの解説をもとに、人が見ている色が犬にはどう見えていると考えられるかをまとめました。
| 人が見ている色 | 犬にはこう見えると考えられる色 | 見つけやすさの目安 |
|---|---|---|
| 青 | 青 | 見やすい |
| 紫・青緑 | 青っぽい色 | 見やすい |
| 黄色 | 黄色 | 見やすい |
| 緑(芝生など) | 灰色がかった黄〜茶色 | 背景に溶け込みやすい |
| オレンジ・赤・ピンク | 暗い黄〜茶色、灰色っぽい色 | 緑の背景では見つけにくい |
PetMDによると、犬の見え方は「赤と緑の区別がつきにくい人」の色覚に近いとされ、AKCも、芝生は灰色がかった茶色に、赤いクッションは暗い茶色のかたまりのように見えていると例えています。
ワンペディア(第一アイペット)の解説では、赤は暗いグレー、緑・黄・オレンジは黄っぽい色、紫・青は青っぽい色に見えるとも紹介されています。
資料によって表現は少し違いますが、「青と黄色は見やすく、赤・緑・オレンジは見分けにくい」という点は共通しています。
ただし、犬の目に実際どう映っているかを、私たちが完全に再現することはできません。色が見分けにくくても、犬は明るさの差・形・動き・においを組み合わせて物を見つけています。
犬の視力は人間の0.2〜0.3程度|近視なの?
犬の視力は、人でいう0.2〜0.3程度とされ、遠くのものをくっきり見る力は人間より弱めです。
「20/75」とは、人が約23m(75フィート)先から見分けられるものを、犬は約6m(20フィート)まで近づかないと同じようには見分けられない、という意味です(Scientific Americanなどの解説より)。
クック博士の総説では、犬の視神経の線維は約16万5千本で、人の約120万本に比べて少ないことも紹介されています。細かい部分を見分ける力より、暗さへの強さや視野の広さを優先したつくりだと説明されています。
「犬は近視なの?」という疑問には、見解が分かれます。ワンペディア(第一アイペット)の解説によると、アメリカの大学獣医学部が犬240頭で行った研究では、ほとんどが近視でも遠視でもない「正視」だったとされています。
一方で、ジャーマンシェパードとロットワイラーは近視の傾向、グレーハウンドは遠視の傾向があるとも紹介されており、犬種による違いもありそうです。
サイトハウンド(視覚で獲物を追う犬種)は視力が良いといわれる、と栃木県動物愛護指導センターも案内しています。人のように視力検査表で測るわけではないため、数字はおおよその目安として受け止めましょう。
犬の視野と動体視力|広く見渡せて、動くものに敏感


視野の広さは、人間の約180度に対して犬は250〜270度ほどとされ、横や後ろの動きにも気づきやすい構造です。ただし視野が広い分、両目で同じものを見て奥行きをつかむ「立体視」できる範囲は人より狭めです。
ボールを追いかけるのは得意でも、空中でキャッチするのが苦手な犬が多いのは、このためといわれています。
動体視力は、犬の得意分野です。Ellevet Sciencesによると、犬は遠くで動いているものを人より素早く正確に見つけられるとされています。
ワンペディアでは、シェパードの実験で、静止した物体は500m以上、動く物体は800m先まで認識できたと紹介されています。栃木県動物愛護指導センターの解説でも、800m先の動くものがわかるとされています。
一方で、動きに敏感ということは、止まっているものは見落としやすいということでもあります。投げたおもちゃがすぐ見つからないときは、少し動かしたり転がしたりすると、気づいてもらいやすくなります。
犬はテレビや動画をどう見ている?
動体視力と関わるのが「フリッカー融合頻度」です。点滅する光が連続した光に見え始める境目のことで、クック博士の総説では、明るい条件で人が50〜60Hz、犬が70〜80Hzほどとされています。
犬のほうが「コマ送り」に気づきやすい可能性があり、昔のテレビの映像がちらついて見えていたかもしれない、という説明もされます。
現在のテレビやスマホは画面の更新が速く、犬にもなめらかに見えやすいと考えられますが、最近の画面で直接測った研究は多くないため、数値は目安にしてください。
犬がテレビに反応するときは、映像だけでなく音にも反応していることが多いといわれます。
犬は暗いところでも見える?夜の見え方のしくみ


「犬 視界」を人と比べたとき、差が大きいのが暗い場所での見え方です。
Ellevet Sciencesによると、犬の網膜には人より多くの桿体があり、さらに多くの犬種では網膜の後ろに「タペタム」という鏡のような層があって、通り抜けた光を反射してもう一度網膜に届けます。
Scientific Americanによると、このしくみのおかげで、犬は人が必要とする光の約6分の1の明るさでも見えるとされます。夜に犬の目が光って見える「アイシャイン」は、このタペタムが光を反射しているためです。
なお、シベリアンハスキーなど瞳が青い犬種はタペタムを持たないとされています(ワンペディア)。
ただし、暗いほど色は感じにくくなり、灰色の濃淡で世界を見ることになります(PetMDより)。真っ暗な場所で何でも見えるわけではないので、夜の散歩では犬の目だけに頼らず、飼い主さんが足元や周囲の安全を確認してあげてください。
犬は視覚より嗅覚と聴覚で世界を見ている
視力や色覚が人に及ばない面がある一方で、犬は嗅覚と聴覚を中心に世界を理解しています。
ワンペディアの解説では、嗅覚は人の1000倍〜1億倍とも紹介されており、数字には大きな幅があるものの、人よりはるかに優れているという点は共通しています。
視力が弱くても、聴覚・嗅覚・触覚で距離感や障害物を察知できるとされます。くわしくは、犬がお尻のにおいを嗅ぐ理由や、サイレンで遠吠えする理由の記事でも触れています。
顔の見分けについては、栃木県動物愛護指導センターが、犬は飼い主の顔を見分けているとしたうえで、サングラスやマスクで顔が見えないと犬が困惑するようだと紹介しています。
声をかけながら近づくなど、視覚以外の情報を添えてあげると安心しやすいでしょう。なお、鏡に映った自分をどう理解しているかについては、嗅覚が鍵になるという見方があります。
🏃 犬の見え方から考える、おもちゃ選びと遊び方のコツ
見える色の特徴を知っておくと、遊びの場面で役に立ちます。AKCによると、犬が見分けやすい青や黄色のおもちゃがおすすめで、赤・ピンク・オレンジは芝生の上で見つけにくいとされています。
しかも、赤やオレンジは犬用おもちゃで人気の色なので、屋外では意外と探しにくいことがあるようです。
かやま動物病院も、犬は色より「形」「動き」「音」に注目しているため、転がるものや音が鳴るおもちゃは色以上に魅力的だと案内しています。
- 屋外(芝生・土):青のおもちゃが背景との差が出やすく、見つけやすい色です
- 室内:床やラグの色と同じ系統だと目立ちません。背景と明るさの差がつく色を選びます
- 2つのおもちゃを区別させたいとき:AKCは、青と黄色の組み合わせを例に挙げています
- 色にこだわりすぎない:赤や緑のボールが芝生の上で見つけにくくても、犬は動き・形・光の反射・においで見つけることがあります
- 安全面:飲み込めるサイズでないか、傷んでかけらが取れていないかも、色と同じくらい大切です
ドッグランや公園で遊ぶ場合は、色選びと一緒に暑さ対策も忘れずに。夏の遊びの注意点は、夏のドッグランの熱中症対策にまとめています。
愛犬の見えにくさのサインと、相談の目安
人から見ると、犬の「見えにくさ」は分かりにくいものです。犬は嗅覚や聴覚で補うのが上手なので、慣れた家の中ではあまり困っていないように見えることもあります。
アメリカ獣医眼科学会(ACVO)の解説では、次のような様子が見えにくさのサインとして挙げられています。なお運営者は獣医師ではないため、ここでの内容は診断ではなく、受診を考える目安としてお読みください。
- 物や人にぶつかる、足元の物につまずく
- 階段や段差、ソファへの上り下りをためらう
- いつもの散歩を嫌がる、慣れない場所で動きが固くなる
- 投げたおもちゃと違う方向を探す、おやつを目で見つけず鼻で探す
- 暗い場所、または明るい場所でだけ様子が変わる
家で見る簡易チェック
かやま動物病院は、家庭でできる簡易的な確認方法として、次の3つを紹介しています。あくまで目安で、見えづらそう、ぶつかることが増えたといった様子があれば、獣医師への相談がすすめられています。
- 威嚇瞬き反応:目の前に手や物をゆっくり近づけ、目を閉じるか観察する(風を避けるため、透明な板や窓越しに行うと判断しやすい)
- 動くものを目で追うか:おもちゃを転がしたり動かしたりして、目で追えるか確認する
- 予想外の動きへの反応:横や後ろから音を立てずに手を動かし、気づくかを見る
目が白っぽく濁って見える、赤い、しょぼしょぼしている、目を痛そうにしているといった様子を伴うこともあります。目の赤みや目やにの見方は、目が赤い・しょぼしょぼするときの見方や目やにの色別チェックが参考になります。
ACVOも、見えにくさが疑われる場合は動物病院で目の検査を受けることをすすめており、急にぶつかるようになった、目に濁りや赤みが出たといった場合は、様子を見すぎず早めに相談してください。
年齢を重ねた子の変化については、老犬介護完全ガイドも役立ちます。
視力が落ちてきた子と暮らすときは、家具の配置をあまり変えない、階段や段差にゲートを付ける、声をかけてから触る、といった配慮で安心して過ごせることが多いといわれます。
よくある質問
- 犬は白黒の世界を見ているって本当ですか?
-
いいえ、白黒だけではありません。Scientific Americanによると、犬は青と黄色を見分けられることが1989年の研究で確かめられています。ただし、赤と緑は人ほど区別できず、灰色や茶色っぽく見えていると考えられています。
- 犬の視力は人間の視力検査でいうとどのくらいですか?
-
明るい場所での視力は20/50〜20/75ほどとされ、小数視力に直すと0.2〜0.3程度(資料によって0.4ほどまでの幅があります)と説明されることが多いです。犬種や年齢、個体差があり、犬に視力検査表を使って測るわけではないため、おおよその目安として考えてください。視力が弱い分、嗅覚や聴覚、広い視野で補っています。
- 犬のおもちゃは何色を選べばいい?
-
犬にとってはっきり見えやすい青か黄色のおもちゃがおすすめです。赤やオレンジ系のおもちゃは芝生の上などで背景と同化して見えにくくなることがあります。子犬期のしつけでおもちゃを使う場合は、甘噛みのしつけ方もあわせて参考にしてみてください。
- 犬はテレビや動画を見て内容を認識しているの?
-
犬は画面に映る映像や音に反応することが分かっており、ある程度は映っているものの動きを認識していると考えられています。ただし犬の動体視力に対してテレビの映像は「コマ送り」に近く見えている可能性もあり、人間とまったく同じように見えているわけではありません。見せるかどうかは愛犬の様子を見て決めれば大丈夫です。
- 犬は真っ暗でも見えるの?
-
真っ暗な場所では、犬でも見えません。タペタムなどのしくみで、わずかな光でも人より見やすいというだけです。暗いほど色は感じにくくなり、灰色の濃淡の世界になるため、夜の散歩は飼い主さんが足元の安全を確認してあげてください。
- 犬は白黒ではなく、青と黄色を中心に見分ける二色型色覚。赤や緑は区別しにくい
- 視力は人でいう0.2〜0.3程度。遠くはぼんやりだが、視野は250〜270度と広い
- 動くものと暗い場所に強い。足りない分は嗅覚と聴覚で補っている
- おもちゃは屋外なら青や黄色を。色よりも動きや音も大切
- ぶつかる・段差をためらう・目が濁るなどの変化があれば、動物病院へ相談
身内のドッグトレーナーに聞いたポイント:犬におもちゃを選ぶときは色だけでなく、動かしたときの見つけやすさ(コントラスト)も大事だと聞いています。芝生の上で遊ばせるなら、赤系よりしつけ全般のコツと合わせて青や黄色のおもちゃを選ぶと反応が良くなりやすいそうです。
この記事の執筆者
ルーク隊長(犬のまとめ 運営者)
子どもの頃から20年以上、犬との暮らしを続けている犬好き。身内にペットトリマー・ドッグトレーナーがおり、日常的に多くの犬と接する環境にある。


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