「最近やたら水を飲む」「元気がなくて、陰部から嫌なにおいがする」——避妊手術をしていない中高齢のメス犬に、こうした変化が見られたら、子宮蓄膿症という命に関わる病気を疑う必要があります。決して珍しい病気ではなく、多くの動物病院で日常的に治療されている疾患ですが、進行が早く、気づいたときには緊急手術が必要なケースも少なくありません。この記事では、子宮蓄膿症の原因から症状、開放型・閉鎖型の違い、治療までを整理してまとめました。



ひとつずつ、やさしく整理していくね。
🏥 子宮蓄膿症とはどんな病気か


子宮蓄膿症は、子宮の中に細菌感染が起こり、膿がたまってしまう病気です。
発情後1〜2か月間続く「黄体期」には、黄体ホルモン(プロジェステロン)の影響で子宮内膜が増殖し、子宮の入り口(子宮頚管)が閉じ、同時に体の免疫力が下がるという条件が重なります。
この時期に腟内の常在菌(大腸菌など)が子宮内に入り込んで増殖すると、子宮蓄膿症を発症します。
避妊手術をしていない中高齢のメス犬に多く見られ、発情出血(いわゆる生理)から2か月ほど経った頃に発症することが多いとされています。
💡 ポイント
避妊手術を行うことで、この病気そのものを防ぐことができます。避妊手術のメリット・デメリットについては避妊・去勢手術のメリットとデメリット(去勢の記事ですが基本的な考え方は共通します)も参考にしてください。
⚠️ 開放型と閉鎖型:どちらが危険?


| タイプ | 特徴 |
|---|---|
| 開放型 | 子宮頚管が開いていて、膿が外陰部から漏れ出る。おりものやにおいで気づきやすい一方、症状に気づかず進行することも。 |
| 閉鎖型 | 子宮頚管が閉じたままで、膿が外に出ず子宮内に溜まり続ける。お腹が膨らんでくるが、外から見て気づきにくい。子宮が破裂するリスクが高く、開放型より重篤化しやすい。 |
🏥 見逃したくない症状


- ✅ 水をたくさん飲むようになった(多飲多尿)
- ✅ 嘔吐が見られる
- ✅ 元気・食欲が落ちている
- ✅ お腹が張ってきた、膨らんでいる
- ✅ 陰部から膿のようなおりものが出ている、いつもと違うにおいがする
- ✅ 直近1〜2か月以内に発情出血があった
⚠️ これは待てる症状ではありません
避妊していないメス犬に上記のようなサインが見られたら、「少し様子を見よう」とせず、その日のうちに動物病院を受診してください。とくに閉鎖型は子宮が破裂すると腹膜炎を起こし、命に関わる状態に急速に進行することがあります。夜間で当日の受診が難しい場合は、夜間救急動物病院に連絡しましょう。
治療:多くは緊急の卵巣子宮摘出術


子宮蓄膿症の第一選択の治療は、全身麻酔に耐えられる状態であれば、子宮と卵巣を摘出する手術です。
基本的な術式は避妊手術と同じですが、子宮蓄膿症の場合は犬の全身状態がすでに悪化していることが多く、膿でもろくなった子宮や血管を扱うため、通常の避妊手術よりもリスクが高く、迅速な対応が求められる緊急手術になります。
手術前には点滴や抗菌薬で全身状態をできる限り安定させたうえで手術に臨むのが一般的です。
まれに、繁殖を希望する場合など内科的治療(薬による子宮内容物の排出)が選択されることもありますが、再発率が高く、緊急性の高い症状がある場合には適用されません。
よくある質問


Q. 一度避妊手術をすれば、子宮蓄膿症の心配はなくなりますか?
A. はい。子宮と卵巣そのものを摘出するため、この病気は発症しなくなります。子宮蓄膿症は避妊手術によって確実に予防できる数少ない病気のひとつです。将来の繁殖を考えていない場合、避妊手術は有力な予防策になります。
Q. 発情出血との見分け方が分かりません。
A. 発情出血は健康なサイクルの一部で、通常2〜3週間で自然に治まり、元気・食欲に変化はありません。一方、子宮蓄膿症のおりものは発情出血が終わって1〜2か月ほど経ってから出ることが多く、においが強く、元気や食欲の低下を伴うのが特徴です。判断に迷う場合は、動物病院で早めに確認してもらいましょう。
Q. 手術後、通常の避妊手術と同じように回復しますか?
A. 通常の避妊手術より全身状態が悪い状態での手術になるため、回復にはより慎重な経過観察が必要です。術後は数日間の入院で点滴や抗菌薬による治療を続けることが多く、回復のペースには個体差があります。獣医師の指示に従って、術後のケアを丁寧に行いましょう。
まとめ


子宮蓄膿症は、避妊手術をしていない中高齢のメス犬に多い、命に関わる緊急疾患です。発情出血から1〜2か月後の多飲多尿や元気消失、お腹の張りといったサインを見逃さず、疑わしい症状があればその日のうちに動物病院を受診することが、愛犬の命を守る最も確実な行動です。将来の繁殖を考えていない場合は、避妊手術がこの病気そのものの予防につながります。
この記事の執筆者
ルーク隊長(犬のまとめ 運営者)
子どもの頃から20年以上、犬との暮らしを続けている犬好き。身内にペットトリマー・ドッグトレーナーがおり、日常的に多くの犬と接する環境にある。



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